先日、廉価版SMDV「フリップバウンス」とも言われているTARION「FB-90」を購入した。注目度が高く、一時期、Amazonのセールが重なったせいで完売していたアイテムでもあるので、実際どんなものなのかを紹介したいと思う。加えて、所有しているSMDV「FLIP BOUNCE28」との比較や、ゴドックスAD300ProおよびAD100Proと、トキスターのライトスタンドを使うとどんな感じになるかも合わせてレビューする。TARIONのフリップバウンスタイプのソフトボックスを購入検討している人はもちろん、GODOXのストロボの購入や、重たいAD300Proを設置しても安心感のあるライトスタンドの購入を検討している方の参考になれば幸いだ。
そして大半の方にとっては、ここで紹介する製品は人生で購入する機会のないものばかりであるw
まずは本家を知る——SMDV「フリップバウンス」とは何か

SMDV「フリップバウンス」は、ワンタッチでソフトボックスを展開できるシステムを搭載して業界をざわつかせ、また、ProfotoのOEMを作っているという噂でもざわつかせているとかいないとかのSMDVから発売されたソフトボックスだ。特徴は、傘を上下逆さまにしたような形状。ストロボの光を蓋になっている天井が白ではない場所や、色被りするような場所でも疑似天井バウンスできれいな光を回すことができる。今、界隈で流行りのライトシェイピングアイテムである。サイズは70cm、110cm、130cmの3種類。実際、130cmは大きすぎてストロボパワーが必要になるので、70cmのSMDV「FLIP BOUNCE28」くらいが使いやすい。
実際に使ってみると、Profotoクオリティー?のきれいな光が上から降り注ぎ、とても鮮やかで綺麗な写真が撮影できる。メインのキーライトにするもよし、背景を含めて全体を明るくするトップライトに使ってもよし。ちなみにトップライトのような使い方をする場合は、キャッチライトを入れるために、60cmくらいのオクタゴンやパラボリックのソフトボックスを1灯フィルライト的に追加するといい。今からソフトボックスを購入する場合は、SMDVやTARIONのようなワンタッチで展開できるタイプが楽かつコンパクトで携行性に優れていると思う。(フリップバウンスが綺麗な光なので、同じく芯のない光を作れるSMDVのビューティーディッシュタイプのソフトボックスが一番合うと思う。……高いけど。)


(「いやいや、テキストじゃなくて作例は?」という方は、10月25日・26日『キミに贈る朗読会 ミディアムブルーは終わらない』に足を運んでご確認いただければ幸いだ。)
TARION「FB-90」の特徴——価格という圧倒的な武器

それではさっそく、TARION「FB-90」が実際どんなものなのかについて見ていこう。数字周りのデータ、スペックシート的なものはAmazonの製品ページでどうぞ。ちなみにサイズは60cmと90cmがある。実際問題、90cmがソロにも複数でも使えて持ち運びできて、スタジオみたいに高さがないところでも設置できるギリギリのサイズ感だと思う。
TARION「FB-90」の大きな特徴は、やっぱり価格だ。1万5000円くらいで購入できる。なお、今回比較対象として出しているSMDV「FLIP BOUNCE28」は、Amazonでは、本体とは別で、ボーエンズマウントのアダプターを別途購入する必要がある。なので、本体4万円+アダプター1万円で、実際は5万円くらいかかってしまうのだ。
そんな本家SMDVの1/4以下の価格で購入できるTARION。ボーエンズマウントのアダプターもついて1万5000円という価格は、圧倒的なメリットといえるだろう。……まあ、金額だけを見るとだが。


TARION「FB-90」は、本家SMDV「フリップバウンス」と同様に”ほぼワンタッチ”でセットアップが完了するソフトボックスだ。具体的には、周辺のトランスルーセント部分はワンタッチで組み上がるが、蓋となる上部は別途マジックテープ(ベルクロ/面ファスナー)で貼り付けていく必要がある。もっとも、一回つけてしまえばそのまま折りたたんで収納も可能だ。
ちなみに、上部の貼り付けは普通のソフトボックスで前面のディフューザーを貼り付けていくのを想像してもらうとわかりやすい。当然貼り付けていくとたるみというか、少し余ってしまう。なので、隙間を強引につぶしていく必要がある。あと、それでいうと全体的に張りに余裕があるというか緩いというか、布の質感が”安っぽい”というか。まあ実際に安いんだけど。
本家SMDV「フリップバウンス」はそもそも上部は取り外せないので、光漏れなどの心配は不要だし”ほぼワンタッチ”ではなく、リアルにワンタッチでセットアップは完了する。また全体の質感も張りもあって、頑丈な雰囲気もあってパリッとしている。さすが高級機材。確かにこれはProfotoのOEMクオリティーだ。あ、ちなみに内面(上面)はシルバーです。銀で光を反射させます。
GODOXのストロボとTOKISTARのライトスタンドと組み合わせてみる

ここから実際にスタンドを立てて、ストロボに装着して試してみたいと思う。今回、ストロボにはAmazonのセールで「30日間で最低価格」くらいまで安くなっているGODOXのAD300ProとAD100Pro(写ってないけど)を、そしてスタンドにはアルミの「TOKISTAR ライトスタンド コンパクトスタンド TS-104-ST」とカーボンの「TOKISTAR カーボンモビライトスタンド TS-112-ST」を用意した(加えて、ボーエンズマウントのアイテムを装着するために必須となるS2ブラケットも)。これらスタンドがAD300Proとソフトボックスの重量を支えられるかも確認できるので、スタンド購入の参考にもしてほしい。





サイズと明るさの比較

まずサイズ感。左がTARION「FB-90」で、右がSMDV「FLIP BOUNCE28」。TARIONのほうが90cmなので大きい。ちょっと調整しているが、ストロボの光量は1/64。なお、ここから先フリップバンスを光らせている時のカメラ設定は、ISO100、1/160、f=6.3で統一。現像時に明るさなど触らず撮って出しとなる。
注意として、こういう形でSMDVとTARIONを2台並べている時は、左がAD300Proで右がAD100Proと、パワーの異なるストロボで光らせているため、あまり比較にはならない(AD100Proは緑被り対策済み)。また、実際にストロボの光量を変えてお見せするが、フリップバウンス系のライトシェイピングツールは何気に光量が必要になる。
スタンドとの相性——重量との闘い
次に、TARION「FB-90」を、AD300Proとともに「TOKISTAR ライトスタンド コンパクトスタンド TS-104-ST」に装着してみた。AD300Proの重量は約1.25kgなので、ボーエンズマウントのツールを装着するS2ブラケット含めて2kgくらいのものをスタンドに乗っけることになる。



まず、TOKISTAR ライトスタンド コンパクトスタンド TS-104-STの一番低くした時と、椅子に座っている人にライティングするのを想定した高さと、立ちポーズでのライティングを想定した高さにセッティングしてみた。どの高さにしてもしっかりとAD300ProとTARIONを支えている。TS-104-STはコンパクトなサイズだけど頑丈だ。
なお、奥に写っているのはハーマンミラー製のイームズのシェルチェア。地味にAD300Proよりも高い椅子。世の中そんなもんである。
光量の違いを検証する
次に光量の違いについても見ていこう。あらためての解説だが、カメラ設定は、この部屋を電気がついていてもブラックボックスにできるISO100、ss=1/160、f=6.3。現像時に明るさやコントラストや色合いなどは調整していない。また、AD300Proを使っており、上から、一番暗いのはストロボ光量1/8、次に真ん中がストロボ光量1/2、そして一番下がストロボ光量1/1のフル発光だ。ストロボのオーバーヒートとかを考えると、光量は1/4くらいまでに押さえておきたいところではある。



ただ、正直1/8で撮るには暗い。なのでISO感度はもっと上げたい。感度上げすぎるとノイズが…という声も聞かれないわけではないが、今のカメラってISO800くらいまでは上げても画質やノイズはそんなに変わらないと思う。それよりISO800まで上げるなら環境光をしっかり落としてブラックボックスを作りたい。じゃないと光が混ざる。
一方、一番下のフル発光は確かに光が溢れているが、これはストロボの消耗を早めるのでおすすめはしない。
簡易的に光質を比較してみる


ちなみに、TARION「FB-90」で作られる光はとても綺麗だ。上がSMDV「FLIP BOUNCE28」で下がTARION「FB-90」。カメラ設定一緒で、どちらもAD300Proの光量1/2で光らせている。TARION「FB-90」の色の再現性など申し分ないし、SMDV「FLIP BOUNCE28」とも遜色ない。というか、「実は下がSMDVでした!」と言われても納得してしまうような、そんな綺麗な光だ。
結論——TARION「FB-90」は買いか
ということで、TARION「FB-90」は光質は綺麗で申し分ない。ただしストロボの光量が必要になるので、テンポ速く撮影するという人はAD300Proの光量は1/4くらいで、部屋の環境光を下げつつ、カメラでISO400くらいまで上げるのがこのTARION「FB-90」の正しい使い方なんじゃないかと思う。
要は買って間違いない。
「いやいや作例もないのに何を……。」という方もいると思うので、しれっとTARION「FB-90」を持ち込んで撮影させてもらった1枚をXから引っ張ってきました。大きな画像で確認したい場合は、Xに飛んでもらって画像を確認してください。ただしこれ、背景の明るさを持ち上げるためにAD100Proも壁バンしてますけどね。
📣番組スタート!
— SHOWROOM (@SHOWROOM_jp) September 30, 2025
9/30(火)19:00〜
@ JAMトークバラエティー『 #ドルバナ 』
MC:白岡今日花(Task have Fun)
ゲスト:内山優花(君と見るそら)、土居麗菜(SCRAMBLE SMILE)、望月みゆ(バンドじゃないもん!MAXX NAKAYOSHI)
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本編最後に運搬時に重要なサイズ感はこんな感じ。TARIONは直径90cmでSMDVは直径70cm。イームズチェアの高さは大体80cm。サイズ感で見ると、被写体がひとりとか多くて2人とかならSMDV、それ以上の人数になる場合はTARIONと使い分けできそう。
余談①——カーボンスタンドとの相性
TARION「FB-90」とAD300Proを「TOKISTAR カーボンモビライトスタンド TS-112-ST」に装着してみたいと思う。この装備で撮影はできるのか。


結論から言うと、座りのインタビューカットならまだ使ってもいいと思う(写真下)。が、立ちポーズの撮影で、スタンドの一番上の細い部分を伸ばすと、AD300Proと「FB-90」の重さでしなって被写体となるモデルの方々に不安感を与えかねない(写真上)。立ちポーズがある場合は「TOKISTAR ライトスタンド コンパクトスタンド TS-104-ST」を持っていくのが正解だ。というか、AD300Proと合わせるスタンドで、ギリギリのコンパクトさと重さに耐えうる剛性を確保できるのが「TOKISTAR ライトスタンド コンパクトスタンド TS-104-ST」だと思う。あと品質の割にめちゃくちゃ安いしね。
余談②——SMDV「FLIP BOUNCE28」の光量検証
SMDV「FLIP BOUNCE28」もTARION「FB-90」と同様に明るさなどを試してみた。



実際、光量が必要なのはSMDV「FLIP BOUNCE28」も変わらない。写真は上(暗い方)から1/8、1/2、1/1フル発光だ。ただ、TARION「FB-90」と比べると光る面積が小さい。SMDV「FLIP BOUNCE28」の場合はサイズが28インチ、つまり70cmなので、グループ撮影など複数の人達を撮影するツールとしては、光が届ききらずにちょっと心もとないかもしれない。
なお、AD100Proと「TOKISTAR カーボンモビライトスタンド TS-112-ST」というコンパクト装備でも使えそうな雰囲気はある。この組み合わせなら、「TOKISTAR カーボンモビライトスタンド TS-112-ST」の一番上の細いところを伸ばしてもしなりが発生しなかった(ただし、AD100Proの光量が必要なので、すぐチャージが間に合わなくなったりオーバーヒートするはず)。

最後に——カーテンの互換性について
SMDV「FLIP BOUNCE」には、光の向きをコントロールできるカーテンというオプションがある。カーテンを使うと被写体に効率よく光を当てることができるため、特に全身写真を撮影する時に使うといいと思う。で、このSMDV「FLIP BOUNCE」とは異なり、TARIONのオプションにはカーテンが用意されていない。ではSMDVのカーテンをTARIONで使えるのだろうか。

答えはYES。SMDV「FLIP BOUNCE」は、上部にマジックテープがぐるりと周りを囲っているので、カーテンをどこにでも装着可能。一方、TARION「FB-90」は、本体上部の決められた3辺にだけマジックテープがつけられているので、そちらにカーテンを付ける形で運用ができる(写真ではTARION「FB-90」にSMDV「FLIP BOUNCE28」用のカーテンを装着している。3辺のベルクロでは接着面の長さがちょっと足りていない)。使い勝手は当然SMDV「FLIP BOUNCE」だし、効果もきっとSMDVのほうが下まできっちり光が回る感じもするが、TARIONでも利用可能なので、TARION「FB-90」を使う予定があって、全身写真を撮る可能性がある人は購入しておくことをおすすめしたい。

「いやいや、作例もなくそんなこと言われても…」ということで、カーテンについての作例を出したいのだが、TARIONとの組み合わせてのカーテンはまだ未使用。一方、SMDV「FLIP BOUNCE28」との組み合わせは、10月25日・26日『キミに贈る朗読会 ミディアムブルーは終わらない』方面でぜひご確認いただければ幸いだ。
関連リンク(今回紹介したアイテム)
TARION「FB-90」
SMDV「FLIP BOUNCE28」
Flip Bounce 44 用 カーテン シルバー
GODOX AD300Pro
GODOX AD100Pro
TOKISTAR ライトスタンド コンパクトスタンド TS-104-ST
TOKISTAR カーボンモビライトスタンド TS-112-ST
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