吉川友が初のディナーショー

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吉川友がアコースティックライブ『You Kikkawa Acoustic Live 〜 Summer Time Love 〜』を8月12日にミュージックレストラン・ラドンナ原宿にて開催した。

ラドンナ原宿といえば、一部クラスターには“CDS(カジュアルディナーショー)”という料理と音楽(と特典会)を楽しめるイベント会場としても知られている場所。今回のきっかのアコースティックライブも同様の形態を採り、まずは料理(昼はワンプレート、夜はコース)が提供され、その後にライブとなる。

料理に関連して、レギュラー番組『吉川友のShowroomで配信してみっか!』の楽屋などで「オリジナルカクテル作りたい!」と発言していた彼女だったが、この日の観客は、何よりもまずそのオリジナルカクテルの名前に絶句することになった。芳醇な黒ぶどうの風味が口いっぱいに広がるカクテルの名前は「吉川友の生き血」。テーブルに運んで「“吉川友の生き血”です。」と、観客ひとりひとりに説明しないといけないウェイターのことを考えると、まったくもって不憫でならない。


食事が終わって、いよいよ吉川友のライブがスタートする。タイトルにもあるように、今回のコンセプトは“アコースティック”。おなじみのきっかバンドの面々に、ギター/バイオリンの楢原英介を加えたメンバーが姿を見せたのち、ドット柄のシースルのインナーと、背中が大きく開いた黒いホルターネックのロンパースを身にまとったボーカル・吉川友がステージへと迎え入れられる。“ディナーショー”という言葉の響きに松浦亜弥のイメージがあるというきっか。今回の衣装は、そんなイメージから、松浦が結婚後に初めて行なった『ラグジュアリー・クリスマス・ナイト2013』で着用した衣装と同じデザイナーに製作を依頼したのだという。

吉川友
ライブは「恋」そしてこの曲の続編となる最新曲「暁 -yoake-」からスタート。バンドメンバーが手にしている楽器は、当然ながらグランドピアノやアコースティックギター、ガットギターにアコースティックベースなどなど。普段のバンドサウンドとは異なる、アナログの温かみを感じさせるサウンドに乗る吉川友の歌声は、聞き馴染みがあるようでいて、新鮮な響きを描き出す。本人も普段以上に意識し、丁寧に言葉のひとつひとつを音に置くように歌っているのだろう、歌詞に綴られた想いはリアリティを持って観客の耳元に届けられる。オーディエンス側はというと、曲中にはクラップはあるものの、いささか場違いになりそうなコールは発生することもなく、曲が始まる静寂と終わったあとの喝采のみ。TPOをわきまえた空気が読める大人たちのライブ、といってしまえばそうなのだが、このような反応をせざるを得ないほどに、吉川友とバンドメンバーの熱演に誰もが胸を掴まれ、息苦しくなるほどに引き込まれていた、と描写したほうが正確かもしれない。

「私自身、まだ緊張がほぐれていないんですけど、今回はいつものバンド編成のライブとは違って、ちょっとしっとりした感じで。グランドピアノだったり、バイオリンが登場したりして、いつもとは変わった雰囲気になると思います。素敵な場所でやらせていただくので、MCもいつものMCじゃなくて、ちゃんと頭の中で言葉のオーディションして……てきとうなことしゃべれないじゃないですか。」

MCで緊張感を伝えようとするきっかだったが、次の曲フリの前にはオリジナルカクテル「吉川友の生き血」について紹介。「生き血、美味しくないですか?」と問いかけて、観客から苦笑が漏れる。偏見報道よろしくこの発言だけを切り取ったら、彼女はもう立派なサイコパスである。

吉川友

とにもかくにも、そんなオリジナルカクテル「吉川友の生き血」を片手に、ここからは森高千里「気分爽快」からのステージを降りてテーブルを回って全員での乾杯。そしてJuice=Juice「「ひとりで生きられそう」って それってねえ、褒めているの?」、さらに松浦亜弥「dearest.」とカバー曲が続く。アイドルが企画などでカバー曲を披露すると、モノマネとまではいかないまでも、オリジナル(アーティスト)の歌い方に影響を受ける個所が出てきても不思議ではないのだが、歌唱力に定評のある吉川友だけに、どの曲も見事なまでに自分の曲にしてしまっているのは特筆したいところ。それはJuice=Juiceの、宮本佳林ちゃんさんの顔がちらつく「「ひとりで生きられそう」って それってねえ、褒めているの?」ではなかったし、「やっと、自分に向けて歌えました。」という名言を残した、あのディナーショーでの松浦亜弥の姿が浮かんでこない、紛れもなく吉川友の「「ひとりで生きられそう」って それってねえ、褒めているの?」であり「dearest.」だった。そして同時に、吉川友の歌唱力は松浦亜弥にも比肩するのではないか。そう気づかされたといっても過言ではない。

……いや、厳密に言うと、松浦と比べてきっかのほうが音の処理が荒削りなのだが、そこはつまり、歌には“吉川友という人の性格”が存分に出ているのだろう。きっと(褒めてません)。

「盛り上がるナンバーも楽器が違うだけでこれだけ聞こえ方が違うんだって発見もあるかと思います。ぜひ、歌詞と音楽を楽しんで聞いてほしいな、なんて思っています。」という言葉とともに、ギターストリングのきらびやかな響きが心地よい「Candy Pop」、そして楢原英介のバイオリンがカウンターパートを流麗に奏でる「Twinkle Days」といったアップテンポな曲を披露。さらに「この曲をアコースティックで聞きたかった!」というファンも多かったであろう名バラード「TO BE…」や「さよなら涙」をきっかは歌い上げる。会場に起因する物理的距離もさることながら、音に隙間が生まれるアコースティックだと発声に混じるブレス音もいつも以上にはっきりと聞こえて、これがオーディエンスには楽曲の持つ体温のようなもの、「共感覚」を覚えさせる。それは、たとえば可聴域を越えたところの音が脳に心地よさを与えるように、この日のアコースティックライブに参加した観客に、“いつものライブとは違う心地よさ”を与えていた。文章で記すと表現の迷路に足を踏み入れそうになるのだが、参加した人は共感できるだろうし、参加しなかった(できなかった)人には理解できないかもしれない。そんな特別な感覚だった。

吉川友

一方のトークでは、「吉川友のライブに初めてきた」という女性を見つけて、友人の男性に連れられてきたことがわかった途端、「……えっと愛人の方ですか? あ、違う? お友達? どうしてもね、愛人かなーって思ってしまいますけどね。」と、いつもの突拍子もない発言で会場を爆笑させる。「言葉のオーディションしながら喋っているつもりだったんですけど。」と口にはしていたが、どんなオーディションも審査員がしっかりと審査しないと意味をなさないということを体現しているかのようである。

「こういった感じのライブ、ずっとやりたいって言ってたんですが、なかなかやるタイミングもなくて。でも、カバー曲もそうですし、自分の曲も違ったアレンジで演れるので、今後も私はやりたいなって思っています。その時はみなさん聞きに来てくれますか?」

ラストにはデビュー曲「きっかけはYOU!」も飛び出した、吉川友初めてのアコースティックライブは、オトナの雰囲気も香らせながら、すべてリアレンジという豪華さで全14曲。観客たちは、夏のフェスやライブとは違った吉川友に酔いしれたのだった。

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