仙石みなみのイベント『定期公演やってみーこ!』が、11月23日にPacific Heaven(パシフィック・ヘブン)にて開催された。
『夏の課外授業』と題された前回の定期公演(BBQ)が8月末。そこから2本の舞台出演と10月のバスツアーを経て、今回は久々となる“レギュラーの定期公演”。現在、女優としての活動に軸足を移しているみーこだけに、ファンにとって定期公演とは、彼女の“誰かを演じる顔”ではなく、仙石みなみとしての歌声とトークが楽しめるプレミアムイベントでもある。
「大丈夫ですか? 風邪引いてないですか、みなさん。最近ね、急激に気温が上……上昇? ……ね、下がっているからね。風邪引かないようにこのイベントで熱くなってくれたらと思います。」
冒頭からの言い間違いもまたみーこらしく、ファンからは穏やかな笑いが起こる。
午前中の吉川友の定期公演に引き続いて、MCのさわやか五郎が呼び込まれてのトークでは、地元・仙台へと向かった先のバスツアーを少し振り返る。しかし「みんなで伊達さん(伊達政宗の銅像)も見れて、牛タンも食べれて……食べれた?(会場にいた参加者は首を横に振る) 食べてないね! 美味しい海の幸を食べました。牡蠣とか。……牡蠣も食べてない? 私は食べました!」と、みーこは団体行動時と自由行動時の記憶があやふや。結果的にみーこが食べたものの振り返りのようになってしまうも、そんな彼女のポンコツっぷりは今に始まったことではなく、むしろそれもひっくるめてみーこの魅力といえる。
そんなことは、SHOWROOMでアップアップガールズ(仮)の番組『戦場(仮)』を担当し、また彼女の定期公演にも作家と現場ディレクションで参加しているエドボル氏も十分に理解しているところ。というわけで用意された企画は、28歳のみーこが年相応の一般常識を身につけているかを確認する「お客さんとのクイズ対決」。みーこの“そっちの意味での魅力”を存分に引き出すものだった。
用意された「政治」「経済」「流行語」「芸能」の各カテゴリー10点、30点、50点の問題を指定して、会場のファンと1対1のクイズ対決を実施。正解したほうがポイントを獲得でき、終了時に総獲得ポイントが高いほうが勝ちというのが今回の企画主旨。もし点差が少し開いても、50点の問題にチャレンジして正解すれば一発逆転も可能という、勝負師・みーこの大胆な賭け(そして玉砕)も見どころになってくるのかもしれない。
「ちゃんと世論を知っているので大丈夫だと思います!」
そんな心強い自信もさることながら、第一問はいったん様子見ということで、経済の10点の問題。「アメリカの通貨はドルですが、中国の通貨はなんでしょう?」とさわやか五郎が読み上げると、すかさずみーこが早押しのボタンを押して、一言。
「チン」
想定外の答えに、集まった全観客の頭上に「?」の文字が浮かんでいる。そして誰しも手を叩いて大爆笑。さわやか五郎も思わず「えっ?チン?」と聞き返すと、みーこは「陳さんっていません? チンギス・ハーンとか!」と、なぜか人名の話をし始める(ご存知のとおり、チンギス・ハーンはモンゴル)。さわやか五郎から「え?通貨ですよ?」とあらためて訊ねられると、みーこは「え、通貨ってなんだ?」と不思議そうな顔。回答権はファン側に移り、特に悩むことなく正解の「元」が出ると、「えっ、なんで元なの? 聞いたことないよね。チンギス・ハーンのチン。“賃金”って言うじゃないですか。」と、みーこは常人の発想を超越した主張を繰り広げている。
次に彼女は、「政治はすごく得意です。」と、さらりと自信を口にして政治の30点の問題を選択する。「ビヨンセが住んでいることでも知られる、アメリカの大統領ドナルド・トランプが所有するビルの名前は?」という問題が読み上げられるやいなや、みーこは早押しボタンを叩いて「ホワイトハウス!」と一言。即座にトタン屋根を打ちつける激しい雨のような爆笑と喝采が巻き起こった(正解はもちろん「トランプタワー」)。
徐々に窮地に追い込まれていくみーこは、この辺で自分の得意なカテゴリーに相手を引きずり込むことを考える。選択した芸能の30点の問題は、書き問題で「吉川友の生年月日を書いてください。」というもの。「これは残念ながら知ってます。何時何分かまで書いたほうがいいですか?」と、余裕で「1992年5月1日」と記載して正解(ただしファン側の代表も正解)。自分より1歳年下で、自分の誕生日と1日違いのきっかの誕生日はさすがに覚えていたようである。
続いて選択した経済の30点の問題は、「コンビニで、120円のおにぎりをイートインスペースで食べるために購入した時、消費税込みでいくらでしょう?」という、“イートイン脱税”なんてフレーズも巷で騒がれたりする消費税に関する書き問題。みーこは、回答用のスケッチブックの端に“120×0.8=960、120-96=134”というリアル脱出ゲームに出てくる暗号かのような謎の数式を残して「134円!」と自信満々に答える。
イートインは消費税10%なので、120円の場合、支払う総額は132円。正解が発表されると「めっちゃ惜しい!ニアミス!」とみーこはなんだかとても嬉しそうである(たとえ惜しくても、仮に発注書や請求書で金額が1円でも合わないと大問題になるのだけど)。
「みなさん、これちゃんと(みーこの)計算式を見ると、120×0.8って計算をしていて、960って数字が出ているです。で、次に120から急に96を引き出したんです。そしたら134って数字が出てる。」
数式を読み解きながら首をひねるさわやか五郎と観客たち。みーこは、自ら組み上げた数字のラビリンスに我々を置き去りにしたままで、次の問題として流行語の50点を選択する。
「2012年のユーキャン新語・流行語大賞は、とあるピン芸人のギャグでした。それは何でしょう? 全力でやってください。」
みーこは「まだ生まれてない!」などといった意味不明な供述をしながら、ですよ。の「あ〜い、とぅいまてぇ〜ん!」をさっそく披露する。さわやか五郎が「俺、あいつと仲いいから言うけど、あいつはエントリーもされてないです(笑)」と切り捨てると、「残念〜!」と、今度は波田陽区を放つ。ファン側からも小島よしおのネタなど飛び出したが、最終的にはみーこが「ワイルドだろぉ〜?」と正解を引き寄せた。
ラストの問題は、逆転をかけての政治の50点。「現在の東京都知事は小池百合子ですが、その前の東京都知事は?」という問題が読み上げられると、「小泉……そういちろう」とみーこが軽くジャブを放ちつつも、両者は沈黙してしまう。さわやか五郎によって最初の2文字が「ます」であることを明かされると、ここでついにみーこが勝負に出る。
「ますだ……ますふみ……ますざき……ますぞえ……ますぞえかずき!」
出題者のさわやか五郎と観客の顔色を見ながらの回答は不正解。もちろん次の瞬間にファン代表が「舛添要一」と答えて、晴れてみーこは珍回答を連発する“非常識な28歳”の称号を獲得してしまったのだった。
◆ ◆ ◆
「今回はね、秋と冬のちょうど真ん中くらいということで、秋と冬の真ん中くらいの歌を。」
企画コーナーのあとは、軽く笑いも取りつつミニライブのコーナーへ。まずはモーニング娘。時代の田中れいなが発表した「キラキラ冬のシャイニーG」からスタート。ファルセットも使い分けながらキラキラのオーラを放って楽しそうにパフォーマンスするみーこと、手拍子を打ちながらそんな姿を眺める観客のコントラストが、寒くて物寂しいだけではない冬の姿を描き出す。
今度は、女優としての演技力をメロディーに乗せ、さっきまでの雰囲気をガラッと変える「渡良瀬橋」をしっとりと歌う。さらに彼女がアプガ楽曲の中で秋冬感を覚える曲として「青春の涙」を披露。さっきまでのしっとりムードだったパシフィック・ヘブンは、一気にEDMサウンドが四方八方に飛び交うクラブへとフロアを変貌する。
その後もみーこは、プライベートでふっと降りてきた曲として、中島みゆきの名曲「糸」をカバーしたほか、最後には勤労感謝の日ということで(?)集まってくれたファンの勤労に感謝して(?)「虹色モザイク」を歌い上げてライブを締めくくった。
「23日で、年内あと1ヶ月とちょろっとなんですよね。あっという間で2019年を過ぎますけども、12月の最後までみなさんと楽しい1年を過ごして、また来年、みなさんといろんな思い出……令和ツーですね。(さわやか五郎「ターミネーターみたいに言わないでください」)令和2年もみなさんといろんな歴史を刻んでいけたらなって思います。」
仙石みなみは、12月11日より俳優座にて舞台『次郎長、渡世人辞めるってよ』に出演する。