吉川友のバースデーライブ『吉川友 LIVE 2024の生誕きっか』が、自身の誕生日当日となる5月1日に渋谷ロフトヘヴンにて開催された。
開演時間となり、暗転したステージの上で、ラベンダーカラーのホルターネックのワンピースという出で立ちとともにマイクスタンドに対峙した吉川友。2022年にアップデートされた「ありのままのI LOVE YOU – Acid Love ver. -」に「ざっくばらんなサヴァイブ」と、オトナきっかとタイトなグルーヴで魅せる2曲から32歳の生誕ライブ『吉川友 LIVE 2024の生誕きっか』をスタートさせる。
観客は黄色のペンライトを振ったりリズムに体を委ねたりして彼女のステージを楽しむ。そして「今日はみなさん、私の32歳の誕生日。たくさんお祝いしてください(笑)。」と、軽く会場に挨拶して、久しぶりにライブ披露となった「Knight Flight」。闇夜を思わせるブルーのライトに彩られながらきっかは歌い上げた。
「あーあ、32歳になっちゃった。どう? 32歳のあたし。……いや、いい女とか可愛いとかの年齢じゃないのよ、もう。ほんと、なんだろ。(客席から「まだ若い!」の声が飛んで)そりゃそうよ、あんたたちに比べたらそりゃ若いわよ。」
そうかと思えば、いきなり場末のスナックでカウンターに突っ伏して酔いつぶれたホステスみたいなやさぐれっぷりトークを炸裂させる吉川友。いや、場末のスナックというものを体験したことがないので、そういう情景が繰り広げられているのかはわからないのだが。
とはいえ、そんな突然の無茶苦茶すぎる話の始め方に、観客は手を叩いて爆笑する。
「ねえ、どうする? ……というわけで、わたしもありがたいことに今年も年を重ねることができました。32歳になりました、吉川友です。今回、GWとはいえ今日って平日じゃない? みなさん、お休みじゃないよね。仕事終わりに会社から来たよ、って人? あ、日本の平和のために頑張ってる人たち。ありがとうございます。そうだよね、GWってさ、世間は休みだと思ってるわけ。でも、そうじゃない人がいるから楽しめているんだよ。みんな感謝したほうがいいよ。マジで。……って最近ちゃんと思ってる。ありがとうございます、みなさん。日本の平和のために。」
毎日毎日、誰かしらが誕生日ですよ。
『吉川友 LIVE 2024の生誕きっか』では、ゲストミュージシャンとしてピアノのハジメタルを迎えてのコーナーも用意される。きっか本人曰く「ピアノと私のツーマン」。ハジメタルが「ツーマンっていうのは人に言いますよね。吉川さんと誰か、みたいな。ピアノにはあまり使わないかな。」と、至極まっとうな指摘を行なってもお構いなしだ。
さらに、ハジメタルも4月26日が誕生日だったことに触れ、「これ不思議なんですけど、私の周りとか、同じ事務所のスタッフさん、タレントさん、4月後半から5月生まれが多いんですよ。たまたまなんですけど、重なっているというか。事務所の方はプレゼントで大忙しだとは思うんですけど。」と、吉川友の誕生日の前日は仙石みなみの、吉川友の翌日はレコード会社スタッフMさんの誕生日など、吉川友の誕生日の前後で誕生日が連続する話題を持ち出す。
しかし、そうかと思えば「でも日本の平均で言うと8月が多いんだっけ?」と、日本人の誕生日の平均についての知識を披露。吉川友の話すとおり、厚生労働省の人口動態統計によると、2021年の月別の出生数の上位は8月と9月、そして7月で、52歳より下の世代は7月から9月生まれが多いとのこと(なお、誕生日で言うと、9月25日生まれが一番多いらしい)。
「毎日毎日、誰かしらが誕生日ですよ。」
この話題を若干投げやりにも聞こえる当たり前なフレーズで締めくくろうとする吉川友。客席からは苦笑と「そりゃそうだ。」の声が起こる。
「……そりゃそうだって言うけど、365日、誰かの誕生日ってすごくない? 1日くらい誕生日ない日があってもいいじゃないですか。日本人上手くできてるよね、毎日毎日誕生日で経済回ってるわ。」
近年の円安傾向にも触れそうな雰囲気だけを残して、曲は「世界中に君は一人だけ」「ドラマチック」そして「こんな私でよかったら」へ。ピアノとの“ツーマン”ということで、アイドルグループにありがちの勢いだけで歌を押し切るわけでもなく、ハジメタルのピアノのタッチに、きっかは目を閉じて丁寧に声を重ねていく。オーディエンスもハジメタルときっかのパフォーマンスを全身で堪能し、酔いしれていた。
最近、MBTIやってみたの。
「私、最近BLTみたいな16種類の……あ、MBTIだ。そうそうそう。『B.L.T』って雑誌じゃんね。MBTIってのが2、3年前に流行っていたことは知ってて。でも私、茨城出身だからブームが来るの遅いの。で、最近、MBTIやってみたの。私は、なんかね、ELAPみたいな……エンターテイナー型なの。……そう、ESFPね。で、ESFPって、『元気、楽しいことが大好き、明るい』っていうのが特徴で、まるっきり私なの。本当に当たってるの。で、ひとつ欠点があって、『ESFPの人は今を生きてるから未来のことを考えない。計画性がないのが欠点です。』っていうのが出て。まさにそうだなって。これまで生誕ライブで「今年はウクレレやってみるわ」って言った年もあれば「スピードラーニングやってみるわ」とか言ったり。全然やってないんだけど。これって私の性格というより人間性の問題。だから私は未来の計画を立てない人間だってのを今日はみんなにも分かってもらいたかった。」
毎年の誕生日に掲げた目標が叶わなかったのは、吉川友の生まれ持った人間性のせい。そうMBTIから明らかになった。……と、そんな本人からの“弁明”を「きっかがまたなんか言ってる。」という感想とともに耳を傾けている観客。とはいえ、我々は吉川友という人と長きに渡る付き合いの中でや、数々の関係者証言などによって、残念ながら「この人は表舞台に出ていないところでは、いたって真面目である」ということを知っている。なので、ウクレレにせよスピードラーニングにせよ、結局のところ目標云々の前に、吉川友という人の日常や芸能活動において、さほど重要なものという位置づけにはならなかったのだろう。ゆえに自ずとプライオリティーが下がっていき、やらなくなってしまった。
推測するにきっとそんなところだろう。人生とは取捨選択の繰り返しである。
石原さとみだってそう言うよ。
なお、この発言に続いて、以下のような発言で彼女は本厄についても触れている。吉川友は本厄の荒波を無事に乗り越えていくことができるのか。年末にはぜひ本厄の1年を振り返ってもらいたいところである。
「今年の生誕も『◯◯をしたい』ってのは言わないようにしてる。だって、私は今を生きてるんだから。ただ今年は『言語に気をつける』。ふぁっ、て言っちゃうの。しかも最近ふぁって言っちゃった言葉が、下品な言葉ばっかりなんですよ。だから、自分で言って、場の空気が凍ったこともあったし。この会場でのイベントで。だから今年は、ちゃんと言葉選び……言語に気をつけよう。あと、32歳は本厄の年なので、なるべく派手なことはしない。控えめにするのを心がけています。でも2024年、もう5ヶ月経ってますが、いまだ私に事故とか危ないこととか起こってないの。でもなんとなくだけど、人間には2つのタイプがいて、本厄の時に自分に降りかかる人と、周りに降りかかる人。多分、私、周りに降りかけちゃう人なの。みんな気をつけて。」
そして本厄のお祓いをしてもらいに、親友のユカと一緒に茨城の大きな神社に行った吉川友。ところが、ご祈祷の最中、きっか曰く“うんこバエ”なる大きなハエが、親友のユカの手にずっと止まっていたのが今年イチ笑った出来事とのこと。
「……え、じゃあ何バエって言うの? あれ“うんこバエ”って言うんだよ。それはしょうがない。石原さとみだってそう言うよ。」
いいえ。言うのは吉川友さんくらいなもんです。
話をライブに戻して、ピアノの生演奏をバックにきっかが歌唱する“ピアノとツーマン”のコーナー。その後半は「暁 -yoake-」「さよならスタンダード」「SEAGULL」という楽曲が並んだ。
吉川友は、これら毛色が異なる3曲を、薄明かりに照らされて、目を閉じて歌い上げる。最近ステージ上でスツールに腰を下ろして、落ち着いたパフォーマンスも増えてきた彼女は、今日のピアノアレンジがいたく気に入った様子。「オケはオケでの楽しみ方があると思うんですけど、ピアノバージョン、オトナじゃない? 私、これがいいです。次回、こちらの方向でよろしくお願いします。」と、今後のライブの方向性への要望も口にしていた。
『え、あいつヤバい。あいつのこと応援してるの?』って言われないように
ハジメタルがステージを降りてからのライブ後半は、2011年10月にリリースされた2枚目のシングル「ハピラピ 〜Sunrise〜」収録曲「Love you forever」から。久しぶりに耳にしたという人も多かったであろうこの曲。オケは当時と変わっていないはずだが、歌い方が今のライブスタイルに合わせた形になっていることもあってか、今の吉川友の曲としての響きを耳元に確かに残していく。歌う側も聞く側も、当時と今で歌詞から見えてくる景色は違ってしまっているのかもしれない。しかし、だからといって曲が色褪せたということはなく、むしろ今にあった輝きを放っているようですらある。
さらに「さよなら涙」に「NEO SUGAR SUGAR YOU」というライブの定番曲では、きっかは随所に当時を彷彿とさせる振りを盛り込んだり、フロアを煽ったり。もちろんそんなステージに呼応するように、客席は黄色のペンライトを振りながらコールを返していた。
終盤に差し掛かり、きっかはワンピースのスカートの裾をハラリとめくる仕草でツイキャス用のカメラにアピールし始める。そしておもむろにさきほどの「ふわっと口にしてしまう発言に注意する32歳にする」というトークを思い出して「あ、こういうこと。わかってるの。最初に言ったでしょ? 自分でも、『こいつ、何やってんだ?』って脳ではわかってるんだけど、体が動いちゃうの。……やっぱ、心と体は一緒にさせたほうがいいね。私は四六時中、幽体離脱してんのかな。」と、我に返る吉川友。
そしてあらためて、「32歳は素敵なレディーになれるように。吉川友を応援しているみんなが、『え、あいつヤバい。あいつのこと応援してるの?』って言われないように、恥にならないように素敵な女性になるってのが目標。『あいつやべーよな。お前、応援してるの?』って。普通にしてたら大丈夫な女なんですけどね。」と笑いが入り交じる意気込みを述べた。
最後は配信シングルとしてリリースされた「I LOVE YOUが言えない」を歌唱する。
この曲は、アップアップガールズ(2)の「starry wink*」(以前から吉川友がアプガ2の曲で好きな曲としてタイトルを挙げる曲)や「シーユーだけ。」(最近、吉川友がアプガ2の曲で好きな曲として、アプガ2メンバーと一緒になったライブで歌ったりしている曲。なお曲紹介ではアプガ2メンバーに曲振りを促すものの、声を被せるように横から「GUだけ。」と曲紹介を横取りし、イントロで「ユニクロも好きだよ。」と口にするところまでが様式美。)を手掛けたナツノコエによる提供作品で、メロディアスなフレーズとドラマティックで艶っぽいアレンジが、32歳の等身大の吉川友と非常にマッチする。
きっかはボブの毛先からホルターネックで露出した肩先までの女性的なラインを振り動かしてリズムを取りながら、言葉と歌詞で描かれた物語を音に乗せていった。
「久しぶりのライブになってしまったんですけど、みなさん楽しんでいただけましたでしょうか? ありがとう。おおきに、おおきにでございます。また来年もちゃんと生誕ライブを迎えられるように。でも今回平日ですからね、水曜日ですよ。仕事で来れないって方もいらっしゃったかと思いますが。……え、誕生日ずらす? でもさ、あれじゃん? 東京にいても独り身だからひとりで過ごすのも嫌じゃん、誕生日当日。そりゃねえ、できるならみなさんに祝っていただきたいといことで、その願望もあり、1回公演のみですが生誕ライブできてよかったです。本当にありがとうございました。また、いろんなお知らせができるよう頑張っていきますので、32歳の吉川友の応援もよろしくお願いします。」
「はい! 汚い手で目を触りません! 」
本編が終了し、ステージを降りる吉川友。客席からは即座に「きっか!」とアンコールを求める声が巻き起こる。暗転したステージに、軽快なギターのカッティングサウンド。「ありがとうございます。最後、みんなジャンプいっちゃおう!」と、吉川友のタオル回しの定番曲「time to zone」がスタートする。
生誕ライブのラストソングとあって、観客は黄色のサイリウムを振りながら、飛び跳ねてコールを入れて思いっきり盛り上がる。後方のカメラに見切れることなどを気にして、ここまで客席に座って楽しんでいた人たちも、ラストソングはそんなことも気にせず総立ち。さらにこの光景に吉川友もテンションが上ったのか、「おめでとうの声を聞こうかな?」と、リハーサルではやらなかった(事前打ち合わせもなかった)観客の間を通り抜けてフロアに降臨。
最後は後方カメラ前に陣取って、観客からの「おめでとう!」の声と歓声と拍手と笑い声に包まれる。そうして吉川友は『吉川友 LIVE 2024の生誕きっか』を締めくくった。
「あははは。あー、よかった誕生日ひとりじゃなくて。今日はもう、喉を休めて、入口にある祝い花を持っていって。このあと黄色い花を持って渋谷を歩いている人がいたら、それ私ね。本当にみなさんありがとうざいました。再びみなさんにお会いできるよう頑張ります。みなさんもストレス社会で負けないよう頑張ってください。あと、変な菌がめっちゃ流行っているので「手洗いうがいはちゃんとしろ」。うちのマネージャーさんも言ってました。「あなた言わないとしないでしょ?」って。だから私の32歳の目標。『ちゃんと手洗いうがいをすること』。はい! 汚い手で目を触りません! 今年は病気に罹らないように気をつけます。おやすみなさい!よいお年を!」
なお、吉川友は今回の『吉川友 LIVE 2024の生誕きっか』の次のワンマンライブもすでに決定している。次回は9月1日に同じ渋谷ロフトヘヴンにて。また、夏には舞台『転生したらスライムだった件』-魔王来襲編&人魔交流編-、そして秋には水木英昭プロデュースvol.28 20周年記念公演「虹色唱歌」といった舞台への出演もアナウンスされている。