PINK CRES.(ピンククレス)が3rdミニアルバム『Soleil』を記念して、リリース日となった10月7日に、自身単独としては初となる無観客配信でのミニライブイベントを開催した。
3rdミニアルバム『Soleil』
彼女たちの3rdミニアルバムは、太陽のように明るい世の中になってほしい、そして歌で多くの人たちにパワーを送りたいという想いから、フランス語で太陽を意味する『Soleil(ソレイユ)』と名付けられた。エッジの効いたサウンドを構築しておきながら、事務所の大先輩にキグルミを着せたりやりたい放題なその“なんだかなんだかありえない”世界観のMVで世間をざわつかせた「トウキョウ・コンフュージョン」や、時にゴージャスにして時にミステリアス。ルーレットのようにベットし続ける生き方をスリリングなシャッフルビートに乗せた「ルーレット」といった先行シングルに加えて、中島卓偉が彼女たちに初めて提供した「(Stray cat is) STARING AT ME」など全8曲を収録している。
さらに本作のリリースイベントとして、PINK CRES.は、東京、大阪、名古屋を中心に発売記念の“鼎談ライブ(トークライブ)”を開催(残念ながら一部日程はメンバーの体調不良で中止となってしまったが)。また、公式サイトなどでは発表していないが、全国各地のショップや地元メディアなどにも足を運んでいる。これは、世界的に猛威を奮っている新型コロナウイルス感染症に対して、十分に気をつけながら自分たちができることを行動に移しているのであり、また中止となってしまった、彼女たちにとってメジャーデビューシングル「ルーレット」のリリースタイミングでの全国各地で予定していたプロモーション施策、および春に実施を予定していたツアーへのリベンジという意味合いもある。
自分たちではどうすることもできない外出自粛期間を経て、あらためて音楽活動できる機会の大切さ、ステージに立てる喜び、そして待ってくれているファンの尊さを再認識した彼女たち。もしかしたら誰よりも『Soleil』のリリースを心待ちにしていたのは、ほかでもないPINK CRES.の3人だったのかもしれない。
チームの妥協なき姿勢
配信を意識してカメラにひとりずつアピールしながら、アルバムのアートワークと同じベージュのレトロシックな衣装で夏焼 雅、小林ひかる、二瓶有加がステージイン。そして自分たちを投影したような代表曲「キレイ・カワイ・ミライ」からライブをスタートさせる。3人の間には新型コロナウイルス対策でパーティションが設置されており、ステージパフォーマンスもいささかの制限を受けることにはなっていたが、とはいえPINK CRES.のライブは無観客であろうと間が区切られていようと、これまでと何ら変わることはない。楽しみ、そして楽しませる。ただそれだけ。ここ最近まで明るめの髪色だったものの、何の前触れもなくセピアグレージュにイメチェンして多くのファンをドキッとさせるほどにいい女度を引き上げた夏焼 雅をセンターに、今日のこのステージを存分に楽しもうとしている彼女たちの空気は配信の画面を通しても存分に伝わってきたはずだ。
自己紹介を挟んで披露した「OH・SHA・RE」は、今回のアルバムに収録された、初披露曲のひとつだ。
一般的に“おしゃれ”とは、流行の最先端を自分なりのアレンジとともに取り入れること。まさにそんなタイトルどおりに、この曲には、テレビや戦隊モノの影響で最近にわかに人気が再燃しているパラパラが取り入れられている。ケンカイサウンドを組み合わせた「トウキョウ・コンフュージョン」同様に、音楽シーンでホットなエッセンスをPINK CRES.流の解釈で世界観に組み込んだチャレンジングかつPINK CRES.らしい“おしゃれな”曲。何よりこのタイミングでパラパラを取り入れた楽曲をリリースできてしまうという、世間とのタイムラグの少なさは、常にフレッシュなPINK CRES.をひとりでも多くの人たちの元へ届けたいというチームの妥協なき姿勢の現れにほかならない。
夏焼 雅、小林ひかる、二瓶有加の三原色
3人は、ステージ上でアイコンタクトを交わしながらパフォーマンスを展開していく。小林ひかると二瓶有加を引っ張っていくというリーダー・夏焼 雅というPINK CRES.のバランスは過去のもの。PINK CRES.は、3人がそれぞれ表現者として覚醒し、それぞれが強い色を持ったグループへと進化。新曲の歌割りなどはもちろんのこと、今回のライブを観ていても、ふたりの存在感がより大きなものになっていることに気付かされることだろう。
言うなれば今のPINK CRES.とは、スポットライトを浴びて輝く夏焼 雅、小林ひかる、二瓶有加の色の三原色。CMYKはその組み合わせによって約1億通りの色彩を表現できるが、この3人も同じように三者三様の色が重なり合って、変幻自在かつ豊かな表現を可能にしているのだ。
ファッショナブルなメロディーラインと振りに連れられたように、雅ちゃんのポニーテールが、衣装の裾が、その先の先までリズミカルに跳ねていく(もっともそのいくつかは、雅ちゃんがあえて動きをつけるという、細部に渡ってプロフェッショナルな技で演出しているからなのだけど)。生見愛瑠(めるる)や宮城大樹らとともにリユースショップ「セカンドストリート」のTVCMに出演するなど、インフルエンサー的なものを中心に活動の幅を広げたこの人は、とはいってもやはりステージに立つ姿が一番似合う。夏焼 雅が他の誰でもない、夏焼 雅にしかできない普遍的なものがあるとするなら、それはステージ上で彼女が放つ瞬間的な強いきらめきと圧倒的な求心力。人は、そのまばゆさをひとつも見逃さないように、ひとつひとつの光の欠片を掬い集めるように彼女のライブパフォーマンスに釘付けとなり、そしていつまでも魅了されてしまう。あと不意に見せる笑顔がただなんかもう可愛い。
「マイネームイズアイデンティティ」
「本番は過去イチ楽しかった!」と、「OH・SHA・RE」(とそれに続く「宇宙の女は甘くない」)を披露して満足げな3人。そしてフラワーアレンジされたマイクスタンドが運び込まれて、アルバムの1曲目に収録されている「マイネームイズアイデンティティ」へ。この楽曲は、小林ひかるがアルバムの中で一番好きと語った作品だ。
「曲をいただいて初めて聴いた時、イントロから「好きー!」ってなったの。かっこいいなと思って。こういう曲ってPINK CRES.で歌うことなかったので。完成したのを聴いた時も感動したの。「あ、こんなふうになるんだ」って。自分の声も、ふたりの声も聴いて、こんなPINK CRES.聴いたことがないって思った。」── 小林ひかる
「これ(「マイネームイズアイデンティティ」)は難しかったなって。印象的な曲になったなって思う。」── 夏焼 雅
先行シングル「ルーレット」にも似たムードを持つ、ジャズテイストの大人な音に乗せ、マイノリティーであることの誇りと社会的スティグマからの解放を訴える。マイクスタンドに艶かしく指を絡ませ、伏し目がちな視線を覗かせながらと、色気をまとったステージングで魅せていく3人。このパフォーマンスも文脈に当てはめて考えるなら、単にセクシーというより、もしかしたらドラァグクイーンのそれをイメージしたものなのかもしれない。雅ちゃんが完璧なまでの魅力を放ってワンコーラスを歌唱すれば、ツーコーラス目で魅せるのは小林ひかる。銃弾のように言葉を浴びせたかと思えば、気だるくさを引きずるように歌いあげる。ラップ担当というイメージを覆す、小林がまた新たな一面を見せた瞬間だった。
そして「マイネームイズアイデンティティ」からの「ルーレット」の流れには、画面の向こう側であまりのかっこよさに思わず声を挙げてしまった、思わず震えたというファンも多かったことだろう。「キレイ・カワイ・ミライ」がPINK CRES.初期の可愛らしさをテーマにした楽曲とするなら、上記2曲は、可愛らしいだけのPINK CRES.ではない、今の3人だからこそ表現できるテーマ性をもった作品。
確実に、これが最新のPINK CRES.のアイデンティティだ。
つらく長い夜の向こう側
ライブの最後は、中島卓偉が初めてPINK CRES.に楽曲提供した「(Stray cat is) STARING AT ME」で締めくくられる。様々な色の照明が重なり合ってプリズムのようにきらめくステージで、ポップでキャッチーなメロディーラインに希望溢れるメッセージを小林ひかる、二瓶有加、夏焼 雅が歌いつないでいく。卓偉が紡いだ想いに3人が声を重ねれば、それは暗い世界に差し込む一筋の光のように響き合う。
配信ライブということで設置されていたカメラに意識を向けていた彼女たちも、この瞬間、少しだけ視線を上げ、つらく長い夜の向こう側に広がる鮮やかな青空を思い浮かべているかのようであった。
「今回のアルバムは異例なことづくしだったので、私自身にとっても心に残るアルバムになりました。みなさんもこのアルバムを一緒に愛していただきつつ、これからもPINK CRES.で大事に歌い、たくさんの方にPINK CRES.の歌が届くように頑張ります。」── 二瓶有加
「無観客配信ライブは私達にとって初めての試みだったので、みなさんからどういうふうに観られているか私たちにはわからないのですが、みなさんと同じ時間を共有できてよかったです。今、直接会ったりライブを行なうことが難しかったりとかいろいろありますけど、PINK CRES.のアルバムを聴いて心がホッとしたとか思ってくれていたら嬉しいです。すごく寄り添ってくれるアルバムになっていると思います。みなさんたくさん聴いて、楽曲を愛してください。」── 小林ひかる
「今のご時世、すごく大変なこともあると思うし。マイナスな考え方になったり。自分たちもライブがなくなったとき、やっぱりすごい不安な気持ちになりました。けど、こうやって少しずつこれまでの日常が戻ってきて。歌う機会が増えて、やっぱり楽しいし。リリースイベントで地方に行ってみなさんにお会いすると嬉しいし、勇気づけられています。『Soleil』には太陽という意味があるので、このアルバムを聴いて、少しでも多くの方に元気になってもらったり、このアルバムでみんなにエネルギーを送りたいと思います。直接ライブができるようになったときには、今日初披露だった「マイネームイズアイデンティティ」とかは、もっと自分のものにしていきたいし。……今日は正直、緊張してました(笑)。「マイネームイズアイデンティティ」は、私はもっと“ドヤっ”ていきたいと思います。観に来てくれる方がいっぱいいるほうが「見せつけてやる!」ってなるんですよ。だから、早くみんなの前で演りたいなと思うし、みんなでお祭り騒ぎしたいので、その時が来るまで、もうちょっとだけ待っていてほしいなと思います。」── 夏焼 雅
彼女たちに見えなくて、我々に見えたもの
ライブ終了後には「目の前に観客がいないから、反応がわからずに緊張した。」と口にして、見守っていたスタッフや関係者にいつも以上に感想を求めているようだったPINK CRES.の3人。彼女たちはきっと、ライブパフォーマンスの完成度を上げていくためにリハーサルや自主練習を重ねてこの日のステージに臨んだことだろう。
何度も重ねていくことで見えてくるものがあれば、重ねれば重ねるほど見えなくなるものもある。そして、彼女たちの配信ライブを初めて目にした我々だからこそ見えるものがある。
ステージに立っていた彼女たちに見えなくて、我々に見えたもの。それは「今のPINK CRES.は、無観客の配信ライブでも何も不安になる必要はない。」ということ。これだけ楽しくてエキサイティングでセクシーでクールなライブを見せつけられたら、画面の前で観ている側の反応なんてものは本人たちが気にするまでもなく、最初から明らかなのである。
One more thing…
そういえば最後のMCで、雅ちゃんの瞳が少しだけ潤んだように見えた。リリース前というのは、いつも期待と同じくらい不安に苛まれるもの。ましてや今回は想像をはるかに超えた出来事によって、その大きさはこれまでと比べものにならないのだから、たとえ雅ちゃんが少しくらい瞳を潤ませたとしても理解できる。……もっとも雅ちゃんは昔からこういうタイミングで“よく瞳が潤む”わけで、それがまた雅ちゃんなんだけど。
そして、パフォーマンスのすべてが終了して、雅ちゃんから順番にステージを下りる。配信がすでに終わっているのにも気づかずに「ハッシュタグ #ソレイユライブ で感想よろしくね!」と、カメラに向かってずっと必死に訴えていた二瓶は、後で配信が終わっていたことをスタッフから聞かされて周りは大爆笑する中で本人はプチパニックになっているところまでを含めて、本当に“にへ”らしいのである。
なおPINK CRES.は、今回アルバムに作品を提供してくれた中島卓偉、そして鈴木愛理らとともに、ライブイベント『Heart to Heart 2020 ~Covers~』にも参加している。本イベントは、日本の音楽シーンを彩ってきた名曲の数々を彼女たちがカバーすることをテーマに、今、この時代にファンの垣根を超えてさまざまな人たちと音楽を共有できる喜びを各地で提供する。PINK CRES.は、追加公演として発表された11月15日(日)のSENDAI GIGS (宮城)および11月21日(土)のZepp Namba(大阪)公演に参加が予定されている。
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