武田舞彩が3月10日、代々木「LIVE STUDIO LODGE」でのイベント『LUMINOUS』と、3月13日には半蔵門線・三越前駅地下道での『日本橋Music Liver』でのフリーライブという形で、進化したパフォーマンスを披露した。ギター1本だった弾き語りスタイルから、機材を駆使した多層的なサウンドスケープへと広がる彼女のパフォーマンス革新の軌跡を追う。
ループペダルとMIDIキーボードが生み出す新たな音の広がり

武田舞彩のライブは、すでに2024年1月の時点で大きな進化を遂げていた。その原動力となったのが「ループペダル」の導入である。この機材は、演奏中にギターやリズムを録音し、それをリアルタイムで重ねていくことで、ソロであっても多層的なサウンドとグルーヴを生み出すことを可能にする。
エド・シーランへの憧れが、彼女をこの表現方法へと導いたのだろう。シーランのパフォーマンスに感銘を受けた武田は、自らも1人でありながら豊かな音楽表現を追求し始めた。なお、同様の手法でライブを行なうKTタンストールのパフォーマンスにも彼女は影響を受けたと語っている。
そして2025年3月、彼女のスタイルはさらなる高みへと到達していた。ループペダルに加え「AKAI MPK mini」というMIDIキーボードを新たに導入。これにより、従来のギターやクラップの音に加え、シンセサイザーの音やSEまでも自在に重ねることが可能になった。そこには、ギター弾き語りの枠を超えた、武田舞彩独自の音の風景が広がっていたのである。
超絶進化した1stシングル「なす」

3月10日の代々木公演では、軽快な「おんなの化学」を披露した後、さっそく新たな武器を駆使。ループペダルを用いてギターのリフやリズム、コーラス、シンセサウンドをリアルタイムで重ねる超絶進化版の1stシングル「なす」を披露した。さらに構成も一新し、ラップ要素まで組み込んだ大胆なアレンジで観客の目と耳を釘付けにした。
「秘密基地」「グレー(gray)」をしっかりと聴かせたのち、彼女はループペダルについて触れ、影響を受けたKTタンストールの「Suddenly I See」をカバー。KTタンストールのクイーンズイングリッシュに対し、武田はL.A仕込みの発音で歌い上げ、クラップで会場全体をひとつにまとめあげた。この曲を聴いて、アン・ハサウェイが美しかった映画を思い出した人もいたかもしれない。
ラストの「ぼくらの熱い夏」もループペダルを駆使して音を重ねていく。もともと青春のロマンを感じさせる楽曲だが、ドラマティックな音の迫力と広がりが加わったことで、ギター1本の時よりもはるかに曲に深みが生まれていた。これぞ進化した武田舞彩サウンドの真骨頂である。

新たな層へのリーチを狙うフリーライブ

武田舞彩の新たなライブスタイルは、彼女のイベントやライブハウスに足を運ぶコアなファンにはすでに披露されていたが、より多くの人に届けるため、今回フリーライブという形式に挑戦したのだろう。彼女のフリーライブの歴史を辿れば、L.A滞在時のサンタモニカのサード ストリート プロムナードや、日本帰国後の新宿駅南口での演奏にまで遡る。
しかし今回は彼女にとって久しぶりのフリーライブであり、しかも三越前駅の地下道という独特な音響空間での挑戦だった。ループペダルとシンセサイザーを駆使した最新の武田舞彩サウンドは、駅を行き交う彼女と接点のなかった人々の足を止め、その音世界へと引き込んでいった。
映像で観る武田舞彩サウンドの最新型

『日本橋Music Liver』での武田舞彩のパフォーマンスは、YouTubeで生配信され、現在もアーカイブとして公開されている。また、本稿でも紹介した「なす」のパフォーマンスも切り抜き動画として視聴可能だ。ここまでルーパーだシンセだと話したが、彼女の相棒・テイラーK24ceが実にカラッとした明るい鳴りを聴かせてくれるのもポイントだ。
百聞は一見にしかず。彼女の最新スタイルを自身の目と耳で確かめてほしい。ソロアーティストの可能性を押し広げる彼女の音楽性に、きっと度肝を抜かれるはずだ。
“武田舞彩” 日本橋路上ライブ【 日本橋 Music Liver 】生配信! 3/13(木) 17:30〜(アーカイブ)



