地球上に満ちる「音」。その混沌たる集合体である「音楽」は、偶然に発せられた音色と、そこに刻まれる周期的なリズムによって紡ぎ出される。物質の摩擦、衝突、侵食、そして様々な現象から生まれる音。それらが織りなすモノリズム、ポリリズム。そう、地球そのものが奏でる壮大なシンフォニーだ。
そして、そんな地球の息吹とも言うべき「音」を、ライブハウスの一角に持ち込みシミュレートする試み。音から生まれ、リズムに刻まれた地球の記憶を紐解く試みが、プロジェクト名:LOLOET……。

……いや、まあ、ここまで壮大な導入で語ってきたけど、これは私が勝手に脳内で展開した妄想に過ぎない。実際、LOLOET(ロロエ)は音と空間を詩的に編むアンビエントなバンド。だが、私はこの日初めて触れた彼らの音楽は、まるで未だ見ぬ「地球創生記」のフィルムに添えられた、深遠なるサウンドトラックのようですらあった。
LOLOETが描く音の地層と和田彩花のポエトリー

下北沢の地下深く、仄暗い空間。下北沢 BASEMENTBARで繰り広げられたのは、まさに音の地層が形成されていく光景だった。ギター、ベース、トランペット、パーカッション&ドラム。それらの楽器が織りなす音の断片が、悠久の時をかけて降り積もる。そこにシンセサイザーとSEサウンドが加わり、そのレイヤーは限りない深みへと沈んでいく。
そして、その音のバウムクーヘンに、そっと染み込んでいくのがボーカル・和田彩花のポエトリーだ。それは、雨上がりの空の下、道路にできた水たまりに映る景色のように、柔軟に表情を変えながらも、決して揺らぐことのない音像を描き出す。緊張と弛緩、変化と不変、存在と非存在――。そんな蜃気楼のような揺らぎの中で、我々は「真理」の片鱗を目撃する。いや、それが実像なのか、はたまた幻なのか……。その問いかけこそが、LOLOETが我々に投げかける最大のテーマなのだろう。
アンビエントミュージックと「その人次第」の宇宙

アンビエントミュージックとは何か。それは精神との対話であり、大地の呼吸であり、時にただのBGMでもある。その境界線は曖昧で、だからこそ奥深い。
下北沢の地下で繰り広げられた、地球の歴史ドキュメンタリーから始まった思考の旅は、紆余曲折を繰り返し、結局は「どう受け取るかは、その人次第」という至極当然の結論へと着地する。雨垂れにさえヴァイブスを感じた瞬間、ありふれた紫陽花はミラーボールと化す。世界は、そして音は、受け取り手の心によって千変万化するのだ。
LOLOETが次なる音の地平を解き明かす時、どんな「真理」が立ち現れるのだろう?
私はそれを、再び下北沢の地下で耳にする。
ノイズのような、祈りのような、あるいは── 誰かがすすった「アンビエントうどん」の音かもしれない。(美味しかった!)
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