鳴らせ、夢を掴む音。武田舞彩が再始動

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武田舞彩が、約10ヶ月ぶりにして事務所移籍後初のワンマンライブ『改めまして、武田舞彩です』を5月29日に銀座ヤマハスタジオにて開催した。

 

武田舞彩は、2012年にダンス&ボーカルグループのメンバーとしてデビュー。センターとして大きな注目を集めていたが、2016年にはグループの活動を休止して2年間のロサンゼルス留学へと出発。2018年の初夏に留学プログラムを終了したものの、所属グループの解散などもあり、帰国後はソロとして芸能活動を再開した。そして、さらなる飛躍を目指して2019年4月には事務所移籍を発表。この日は、本人にとってもファンにとっても待望のワンマンライブだ。

 

■ アットホームなリハーサル

彼女が移籍したのは、「タレントは家族」と語る相澤正久社長が率いる老舗の芸能プロダクション・サンミュージック。まさにその言葉を裏付けるように、この日のバックヤードには彼女のマネージャー氏の奥様手作りのおにぎりや唐揚げが並ぶ。また、夕方前から始まったリハーサルには、事務所関係者や彼女の活動を裏側で支えているスタッフが足を運び、さながら“昼公演”のような状況だ。

そして今日から本格的に歩みだす新人シンガー・ソングライターのことが心配だったのだろうか、相澤社長もスケジュールの合間を縫ってリハーサルを見学。舞彩に声をかけて、ステージ上で一緒の写真に収まる。無礼を承知でたとえるなら、その姿はまるで、ハレの日を迎えた孫のことを心配して駆けつけたものの、ステージ上でギターを堂々と弾き語る姿を見てその不安は霧散し、ただただ目を細めているおじいちゃんである。

しかしそんなリハーサルは、同時に、舞彩が新しい事務所にファミリーとして迎え入れられて、大切に思われていることがわかる風景でもあった。

 

■武田舞彩「私が誰だかわかりますか? 武田です!」

本番は時間通りにスタート。暗転したステージに舞彩が姿を見せる。そして未来のために“自己投資”したというテイラーのアコースティックギター(なんと、テイラー製のトラ目が美しいハワイアンコアでフローレンタイン・カッタウェイ。あのテイラー・スウィフトが持っているのと同じモデル)を抱えてマイクスタンドの前に立つ。スポットライトが彼女の姿を浮かび上がらせての1曲目は、ロサンゼルス留学中に始めて作曲した「Say You Love Me」。サンタモニカでの行なっていたストリートライブの生配信で初披露され、帰国後のソロ活動でも歌ってきた、彼女のファンにとっては馴染みの楽曲だ。

 

「元気ですかー! みなさん、私が誰だかわかりますか? 武田です!」

 

舞彩は、“知ってるから来てるんだよ!”と思わずツッコミを入れたくなるような、昔と変わらないノリの挨拶で笑いを起こす。しかし、これからシンガー・ソングライターとしての活動をスタートさせるにあたって、数多くの新曲を用意していることを明かすと、さっきまで笑っていた観客の間からは驚きの声が起こっていた。

「去年はいろいろありまして。去年に私の人生が詰まっていたというか。行き詰まっていた部分もあったし、悩んだところもあったんですけど、振り返ってばかりだと前に進めないし。頭の片隅に“戻りたいな”って気持ちもあったんですけど、自分が前に進むために書いた曲です。」

 

夢を持って上京した頃の気持ちを歌詞にシンクロさせた「東京」や、苦楽をともにしてきた仲間たちとの別れなど、激動の2018年に感じた様々な感情を“自分が前に進むために”言葉とメロディーに変えた「サヨナラ、僕の青春。」、そして夢に向かって一緒に頑張ろうと誓っていた人が亡くなるという出来事がきっかけとなって生まれた「あなたの呼吸が止まる前に」を1曲ずつ披露していく。弾き語りというスタイルであるがゆえに、舞彩は自身の歌声だけでなく、爪弾くギターのストリングスひとつひとつでも曲の世界観を描こうとする。

 

昔から彼女を観てきたファンは、この日のショウで舞彩の成長に気付かされたという人もいることだろう。初期の頃よりギターストロークは安定し、最初に披露された「Say You Love Me」など、本人もパフォーマンスしながら楽しむ余裕が生まれていた。

 

■ 猫かぶっている部分はあるんで、これから暴れていこうかな(笑)

中盤に披露された、彼女が敬愛してやまないエド・シーラン「Thinking Out Loud」や、スタンダード・ナンバー「Can’t help Falling Love」では、武田舞彩としての表現とロサンゼルス仕込みの流暢な英語で披露。想いを丁寧に音に乗せる彼女のハスキーなボーカルは、まさにエド・シーランがオーディエンスに対してそうであるように、詰めかけた彼女のファンの心に触れ、そして陶酔させていく。

 

「ふぅー!」と、舞彩のテンションも振り切れるくらいに盛り上がったところで「質問コーナー」へ。舞彩は、開演前に観客に書いてもらった質問が入っているボックスから1枚ずつ紙を取り出して読み上げる。

「『コラボしてみたい歌手の人、アーティストは?』 ── 今、もうね、これだけ歌ってきてね、エド・シーランしかいませんよね。私の目標であり、いつかは一緒にステージに立てるようになりたいと思って、いつもYouTubeで聴いているんですけど。エド・シーランと共演したいです。」

 

「『家電破壊体質は治りましたか?』 ── 私、電化製品をすぐ壊してしまうんですけど、まだ治んないですよね。静電気をとるキーホルダーをこの間いただいて、それをつけているんですけど。誰か逆のタイプの人っていらっしゃらないですかね? マイナスイオンみたいな。」

 

「『事務所が変わって初めてのライブ、どんな気持ちで迎えていますか?』 ── すごくどちらの事務所さんも温かく背中を押してくださったり、迎えてくださったので、すごくやりやすい環境にいるので、今が一番楽しいと思えるし。みなさんが温かく迎えてくれているうちに頑張らないとなって。まだ猫かぶっている部分はあるんで、これからどんどん暴れていこうかな(笑)」

 

「『5年後、10年後の自分は?』 ── シンガー・ソングライターとして今日初めてステージに立ってからは、毎日のようにライブしていきたいと思っているし、これからどんどんいろんなライブに出ていこうと思っているので、5年後は……東京ドームっすか? ご、ごめんなさいね。自信過剰でナルシストみたいで(笑)」

 

「『今使っているシャンプーはなんですか?』 ── 私、1回使い切りのシャンプーを使っていて、いろんなシャンプーを試しているんです。私、髪質が人類で最高くらいに悪いんです。だから、いろんな髪用のシャンプーを試しているところです。」

 

「『地元愛について』 ── 私、福井県出身なんですけど、行ったことある方いらっしゃいます? うわー!いっぱいいる! ……何しに行ったんですか? 私ももっと福井でライブすると思うので、みなさん一緒に福井に行きましょう。」

 

「『お姉さんとユニットを組むとしたら、ユニット名は?』 ── 私、お姉ちゃんがいて、お姉ちゃんはフルートやっているんですよ。なんだろう。フルートでしょ……フルーチェ。」

 

「『最近食べた美味しい食べ物は?』 ── えっと、うーん。私、カロリーメイトにハマっていて。毎日カロリーメイト食べちゃうんですよ。マネージャーさんには止められてて、でもカロリーメイトって本当に美味しいですよ。だから、私はカロリーメイトをおすすめします。」

 

「『今度出演したいイベントは?』 ── アメリカのロサンゼルスでやるコーチェラ・フェスティバルって知ってます? 私はそれに出たくて。いつかは。あとは……ロッキンジャパンフェスとか大きなフェスにも出ていきたいなって思っています。」

 

■ 「どのツラ下げて ほざいてんの?」

いくつか質問を読み上げたところでタイムアップ。質問が入ったボックスを片付けて「宴もたけなわ……」ではなく「宴も“たけざわ”ということで……」と、一言。伝わりにくい舞彩のボケにキョトンとする人や、頑張って笑おうとする人、「サンミュージックなんだから、そこは“あいざわ”にするべきじゃね?」と思ったり思わなかったりする人など、様々な反応が起こる客席を尻目に、舞彩は再びギターを抱える。そしてふと思い出す。

「えっと……このギターに名前つけたんですよ。何かわかります? 当てたら本当にすごいですよ。名前分かる人? え、いないの? なんか、ない? ちょっと変わっている名前。……え、わかんないの? えっとね、『ひじき丸』って名前にしたの。可愛いでしょ? “ひじき丸〜。” “よっ!”って。」

 

こんな超展開に「あぁ、舞彩ちゃんはひじきが好きだからね。だから“ひじき丸”か。」なんてすんなり納得できる人がどれだけいたかはわからないが、とにかく我々の想像の斜め上を行き続ける舞彩のライブも後半戦。次に披露された「なす」で、我々は大きな衝撃とともに、武田舞彩の違う一面を目に、耳にすることになる。

スポットライトを浴びて、暗闇にコントラスト強めの舞彩が描き出される。リズミカルな音を鳴らしながら「あんたなんて 必要ねぇ」「どのツラ下げて ほざいてんの?」と、荒々しく吐き捨て歌う姿。アイドル時代の武田舞彩からは想像できない“ヒリヒリとざらついた”表現の数々は、「なす」のパフォーマンスが終わった後に場内が軽くざわつくほどのインパクトをオーディエンスに与えた。

 

■ 「人生は まるで メリーゴーランド」

続く「ジャーニー・ガール」について、どういう表現が一番想いを伝えられるのかを吟味するように舞彩は言葉を発していく。

 

「夢を見ることは素晴らしいこと。私には夢があるし、みなさんにもたくさんあると思うんですよ。でも夢を叶えることってすっごく難しいし、でも簡単に叶えちゃう人もいる。だけど、自分の人生を変えられるのは自分だけ。誰かが語る夢を信じていても、きっと上手くいかない。そう私は思っているから、自分で自分自身の夢を叶えるため、今、私はひとりでステージに立っている。だから、みなさんにも夢があって、その夢を応援するような。みなさんと私の架け橋になるような曲として作りました。」

 

未来への航路を指し示すひとつ星のように輝いたライトに照らされて歌う舞彩が、その視線の先に見据えているもの。それは同時に、ステージの彼女を見つめている我々ひとりひとりが、舞彩を通してこれから目にすることになるであろう光景。キャッチーなメロディーラインと「人生は まるで メリーゴーランド」とロマンに溢れた歌詞には、同時に「夢を掴む」という不屈の精神が宿っている。

 

■ 「私についてきてください。シクヨロ!」

「ひとつ告知がありまして。今日は1stライブじゃないですか。なんと、2ndライブが決まりました! 8月25日の日曜日に、場所はまだ言えないんですけど、東京のほうでライブをさせていただくことになりました。」

 

早くも次のライブ日程が発表され、客席からは歓声が上がる。舞彩は「8月25日? 8月25日の近くに……8月21日? みなさんの大好きなあの方の誕生日ですよね。誰とは言わないですけど。」と、自分自身の誕生日を匂わせながら、オーディエンスと再会の約束をするのだった。

 

ライブのラストを飾ったのは、7曲目の新曲となる「NEW WORLD」。そのタイトルどおり、希望に溢れた未来へと飛び出していく舞彩らしい楽曲だ。

 

「新しいスタートを切る方、挫折しそうな方の背中を押すんじゃなくて、前から引っ張っていきたいんですよ、私は。だからみなさんも、私についてきてください。シクヨロ!」

 

突然のドヤ顔からは、それが死語なのかテニプリなのかなんなのかは読み取れないが、とにもかくにもラストソング。背景にはステンドグラスのような色とりどりの模様が映し出され、軽快なギターストロークで彼女がポップに歌えば、その声がやがてたどり着く世界はきっと明るい。

 

「NEW WORLD」は、そんなことを確信させる音のきらめきで溢れていた。

「ありがとうございました!」と、マイクを通さずに叫んでステージを降りた舞彩と、明るくなる客電に流れ出す客出しのBGM。完全にこれは公演終了の合図だが、それでも巻き起こるアンコール。観客の声に押されるように、舞彩は再びステージへと姿を見せる。

 

「アンコール考えてなかったんですけど、なんか歌ってほしい曲とかあります?」と、会場にリクエストを投げかけると、客席からは「なす」の声がチラホラと聞こえてくる。舞彩は「『なす』で終わるのアレじゃない!? みんな(ストレスが)溜まってるんすね。」と、笑って、「明るめの曲で!」と、逆にリクエストを返す。会場投票によって決まったのは、この日のセットリストになかった「Say You Love Me(English ver.)」。持ち歌とはいえ、歌詞を確認できるわけでもなく、言ってしまえば即興にも近いパフォーマンスに、観客はたまらず拍手喝采だ。

 

「今日はすっごく楽しかったので、また次回、お待ちしています。……では、さらばだ!」という言葉とともに身を翻してステージを去る舞彩。オーディエンスは、新たなシンガー・ソングライターが誕生した瞬間を共有したという興奮と感動、そして「えっと、武士かな? あの子はアニメの世界から出てきた武士か何かなのかな?」という少しの困惑を覚えるのだった。

 

■ 武田舞彩が鳴らす音

そのほかこの日のライブでは、話している時に「はい」と言ってしまう癖を矯正するために、「はい」というたびに腹筋することを課されていることを明かしながら、無意識に「はい」と何度も言ってしまい頭を抱えてしまったり、弾き語りのワンマンライブはステージ上にひとりで寂しいからと家からクマの人形(名前は“つぶあん”と“こしあん”に決定)を連れてきたりと、昔と変わらない舞彩ワールドが縦横無尽に展開された。しかし、ステージパフォーマンスは、(そもそも全編弾き語りというスタイルはもちろんだが)昔とは確実に異なっていた。オフィシャルとして各メディアに掲載された原稿には、「ただ、誰かに作ってもらった綺麗な服を着せてもらうのではなく、たとえそれが不格好だったとしても、自分の着たい服を自分で糸から紡ぎ、自分の意志で着る。それが今の武田舞彩。」と書いたが、まさに彼女は、敷かれたレールの上を走るのではなく、自分で目的地を定め、そして自分の足でそこまで歩いていくことを決めたのだろう。

 

夢は願うものではなく、叶えるものであり、自分で掴むもの。そして「私に夢を託してほしい」ではなく「私と一緒に夢を掴みに行こう」。

 

今の彼女から聴こえるのは、そんな強い音だ。

 

「聞いてくださいよ。今日ってゆずさんが東京ドームで弾き語りライブをされているそうで、私も弾き語りライブしているじゃないですか。被ったなって(笑)。私は東京ドームに立つのが夢なので、勝手に燃えているんですけど、みなさんも私についてきてくださいね! あと、東京ドームって早く言うと“武田”っぽいんですよ。“トキョドー”。聞こえません?」── 武田舞彩

 

……そ、そうですね。

 

武田舞彩 1st Live 〜改めまして、武田舞彩です(いちご)〜

M-1:Say You Love Me
M-2:東京
M-3:サヨナラ、僕の青春。
M-4:あなたの呼吸が止まる前に
M-5:Thinking Out Loud
M-6:Can’t Help Falling in Love
M-7:Starving
M-8:Shape of You
M-9:なす
M-10:ジャーニー・ガール
M-11:NEW WORLD
アンコール:Say You Love Me(English ver.)

◆武田舞彩 Twitter
◆武田舞彩 Instagram

 

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