武田舞彩「生きるってめっちゃ大変。21歳って大変。」

渋谷“武者修行3連戦”最終日のステージにて

12月3日は渋谷TAKE OFF 7にて開催された『SHIBUYA! PARTY! PARTY! Vol.48』に、翌4日にはShibuya eggmanで行なわれた『surround around』に出演と、連日対バンイベントのステージを踏んでいる武田舞彩。12月5日には代官山LOOPで開催された『Heart Beats!!』にてライブを披露した。

 

ストリートとはまた違うアウェーな空気に満ちたライブハウスで、相棒のテイラーのギターを手に自分の歌で勝負するという“武者修行3連戦”の最終日。舞彩はいつものように姿を見せると、感触を確かめるようにギターを鳴らして「Say You Love Me」から自分のステージをスタートさせる。彼女がシンガーソングライターとしての活動を開始して最初に作り歌ってきた曲とあって、ライブパフォーマンスにも安定感があり、すっかり“聴かせる曲”へと成長した。

武田舞彩

「今日は、“ご新規さんいらっしゃい”という感じで頑張っていこうと思うので、ぜひ応援してくれたら嬉しいなと思います。」

 

舞彩は両手を広げて、いつもどおりの変なテンションで観客に呼びかける(褒めてます)。そして次に披露する「Hurts」について「みなさんもドロドロの恋愛とかしていると思うんです。」と、語りだす。“子供の頃からこの業界で大人に囲まれて仕事してきた私は、あなたたちのことがある程度わかっているのよ”とでも言わんばかりの悟った顔をして、である。「恋愛というのは人生の中で大きな感情だと思うんですけど、そんなみなさんの気持ちも代弁するつもりで歌わせていただきます。」と、そんなふうに言葉を続けた彼女。少なくともドロドロの恋愛をしている真っ最中なら、こんな平日の夜に代官山のライブハウスに足を運んでいる余裕はないのではないだろうか……とも思ったが、とにもかくにも「代弁してくれてありがとう」と、なんとなく自分自身を納得させてみる。

 

ところが、「Hurts」を披露するタイミングで、ギターの音が出ないという音響トラブルが発生してしまう。アコースティックギターなので戸惑いながら音を鳴らしてはみたものの、やっぱり一旦ギターを止めることに。

 

「私、めちゃくちゃ電化製品壊すんですよ。私のこと知ってる方は知ってると思うんですけど、1ヶ月に3回くらいパソコンを修理に出すくらい電化製品を壊すんです。」と、話しながらシールドをチェック、そして再びギターを鳴らして音が出ることを確認し、あらためて「Hurts」を披露する。ところがやはり接触がよくない様子。武田舞彩は気にしないように歌うも、ダイレクトに音に影響が出てしまう部分だけに、気にするなというほうが酷というもの。それもひっくるめての“ライブ”であり、トラブルがあったことで、歌だけでは伝えきれない武田舞彩らしさがフロアに伝わっていたのは確かなので、端から見たら結果オーライ。だがしかし、彼女は人一倍負けん気が強いだけに、この日の「Hurts」は、他でもない武田舞彩自身にとって“Hurts”な経験として刻まれたことであろう。

 

「これも武田舞彩伝説というか……いい経験ですよね。でも今日、これがあったからみんな覚えてくれましたよね。電化製品を壊す武田舞彩で覚えてくれたらと思います。」

 

ライブハウスのステージスタッフがステージに上がり、あらためてギターとシールドを接続。今度はしっかりと音が出ることを確認して「お待たせいたしましたー。武田舞彩と申しますー。気を取り直して。武田舞彩はここからですよ。今まではオープニングアクト。」と、再び両手を広げて会場に呼びかける。そしてこのタイミングで新曲を投入することになる。

武田舞彩
「夢を叶えることはすごく難しくて。夢に向かっている途中に、いっぱいいろんなこと言われるし……。私はまだ若造だから、いろんなことを言われるんです。いろんな人が私にアドバイスをくれるんですけど、全部違うことを言われて、私がパニックになっちゃって。そんな中でできた楽曲です。“若いな”って感じる方もいるかもしれません。」

 

まさに最新の武田舞彩のことを歌ったような「going my way」。“泥をすすった日々も意味があるから”というキーフレーズが“昔を知る人たち”の耳を惹きつけるこの新曲を、舞彩は格闘するように懸命にギターをかき鳴らしながら歌い上げる。新曲であるがゆえに、まだ体に慣らしている途中。この曲は、武田舞彩を一体どんな姿にドレスアップする1曲になるのだろうか。

 

さらに小学3年生の頃から大人に囲まれて活動していたがゆえに、自分の気持ちを殺して生きてきた自分のことを歌った「ねこ」を披露する。言ってしまえば、この曲は“昔、目にした幻想”を今の彼女に重ね続ける“群れ”に対して、その幻想は文字通り幻想でしかなかったことを告げている曲。

 

ステージでスポットライトを浴びる人たちは、ひとりでも多くの人たちに夢を与えることが仕事。そう考えると、いつまでも過去と決別できないままの人たちには、その人たちが大切にしている過去の宝石に傷をつけることなく、夢を見させてあげたままでいたほうが正解なのかもしれない。それがたとえ道化師のように演じさせられてきた笑顔だったとしても、いまだに過去しか見れない群れは、仮面の裏で流れた涙に気づくことも、目を向けることもないのだから。

 

しかし、あえて彼女は裏側を歌にした。それは過去の自分との決別というよりも、幻ではなく実体を、今の自分を見てほしいという魂からの叫び。そして同時にその歌に忍ばせた感情は、彼女と同じように本当の自分を殺して生きてきた、もしくは今もそうやって生きにくい世の中を必死に生きる人たちにも共振を起こす。

 

「ねこ」には、ひらがなタイトルの柔らかさからは想像できないほどに、歌う本人だけでなく、聴いている我々も傷だらけになるような鋭利な言葉と感情が込められている。

 

そして、人は時に傷ついてまたひとつ大人になる。

武田舞彩

「生きるってめっちゃ大変。21歳って大変。」 歌い終わった舞彩の口からそんな言葉がついこぼれて、会場の笑いを誘う。そして最後は、今のファンの中でも人気曲であり、スタッフ陣からも武田舞彩らしい1曲として支持が高い「東京」で締めくくる。ステージに立てることの感謝と、中学2年生でひとり上京し、今もなお夢を追い続けるという意志を込めた力強い彼女の歌声とグルーヴは、武田舞彩を中心にフロアへと広がり、彼女への強い求心力へと変わっていくようだった。

 

武田舞彩は、12/12(木)に、銀座のヤマハホールにて行なわれる『Girls’ Acoustic Live Stage』に出演が決定している。

 

『Girls’ Acoustic Live Stage』
日時:2019年12月12日(木)
OPEN 17:00 / START 18:00 予定
※開場・開演時間に変更が生じる場合がありますので予めご了承下さい。
会場:ヤマハホール(銀座)
出演:武田舞彩/反田葉月/⻑久玲奈/原田珠々華/村田寛奈 (50音順))

 

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