武田舞彩はeggmanでも不機嫌で絶好調だったという話

2月6日@渋谷eggman『JEALOUS』にて

「今日の武田さんの調子はどうですか?」

「うん。さっきまで不機嫌でした。」

「あ、それはよかったです。」

武田舞彩が、2月6日に渋谷eggmanにて開催されたライブイベント『JEALOUS』に出演した。冒頭のやり取りは、私が会場に到着してマネージャー氏と交わしたものである。

takeda_maaya

思い返せばその昔、“ギタ女”なんて言葉もなかった頃、グレコの名機・Boogie BG800を手にするフロントウーマン・イリアのジューシィ・フルーツというバンドが発表し、PerfumeやGO!GO!7188、やくしまるえつこらがカバーした「ジェニーはご機嫌ななめ」という名曲があった。

……が、それとはまったく関係ないところで、本日も「武田はご機嫌ななめ」。しかしながら、(ファンならご存知のとおり)今の彼女の曲のいくつかには、彼女自身のフラストレーションを表現しているものもあり、不機嫌であればあるほど、いいステージとなってしまう場合が多い。「武田はさっきまで不機嫌でした。なのでリハの時点からパフォーマンスが素晴らしかったです!」というのは、裏側で繰り広げられるいつもの笑い話である。

 

ちなみに不機嫌な武田舞彩とそれに対応するマネージャー氏の面白エピソードは日々量産されている。将来『武田舞彩の不機嫌伝説』と呼んでもふさわしい時期がきた暁には、どこかで公開したいと思う。

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「みなさんこんばんは、武田舞彩です。今日はめちゃめちゃ寒い中、お集まりいただいてありがとうございます。今日のイベントタイトルは『JEALOUS』なので、私が地元の福井から上京して、自分の羨望の気持ちを描いた曲を歌いたいと思います。」

 

この日の舞彩のステージは、相棒のTaylor K24ce FLCを歯切れよく鳴らして歌い上げる「東京」から始まった。自ら生み出すグルーヴに、東京での決意を歌声に乗せるこの曲は、シンガーソングライターとして活動を再開した武田舞彩の今のファンの中でも人気が高い。

 

昨今、髪の毛をストレートに下ろして、いささかエッジの効いたスタイルを採っている舞彩が次に披露したのは「Hurts」。恋愛の“痛み”の部分を鋭く切り取った1曲をヴィジュアライズするように、点滅し回転するライトが、揺れ動く感情をステージに浮かび上がらせる。

 

「失ってから、離れてから気づく感情って多くて。今、近くにいてくださる方とか周りにいてくださる方で、一生そばにいてくれる人ってなかなか少ないと思うんですけど、だからこそ、すごく感謝しなくちゃいけないなって思います。」

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言ってしまえば21歳の女の子。しかし「あなたの呼吸が止まる前に」や「サヨナラ、僕の青春。」で、舞彩が歌声に哀愁をまとわせることができるのは、数年後にも当然そこにあると思っていた人たちとの急な別れといった、年齢以上に様々な経験を彼女自身がしてきたから。「みなさんも周りの大切な人には、ちゃんと感謝の気持ちを伝えてほしい。」という訴えと、今となってはどうすることもできない彼女の悔恨の念は、まるで水に落ちたインクのようにフロアへと広がっていく。

武田舞彩

ラストは「なす」。現代社会に渦巻く理不尽と不条理。若さゆえに生まれる葛藤と粗削りな叛旗。舞彩はこれを限りなくプライベートな情景に落とし込んだ……というか、スーツ着た偉い人にあれこれ言われて「Shut Up!」と喉まで出かかった彼女の鬱憤とザラついた感情を曲という体裁で炸裂させる。

 

会社で上司に怒られたり……といったありがちなシーンを挙げつつ「みなさんに寄り添えるような楽曲がもっと作れたら。」なんて言葉で彼女はこの曲を紹介するのだが、実際問題、このライブパフォーマンスを目の当たりにすると、誰かに怒られたとかいう類の自身のくだらない自分の不満なんかどうでもよくなり、そんなことよりも「武田舞彩に恨まれたら末代まで祟る勢いで歌われてしまう」「武田舞彩は絶対に怒らせてはいけない」といった、ある種の危機管理意識を抱いてしまうのが現実だ。

 

さて、そんな武田舞彩は、3月20日(祝・金)に初のバンドセットでの単独公演『武田舞彩 3rd Live ばんどライブで覚醒かも』を代官山Loopにて開催する。隙あらば差し込まれる各所からの多種多様な予定やお誘いに対して、この日を全力で死守できるか否か。

 

末代まで祟る勢いで歌われてしまうのを回避するためにも、2月は正念場である。

 

武田舞彩

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