スパガ・樋口なづなのボーカリストとしての片鱗

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SUPER☆GiRLSの樋口なづなが、7月27日にソロオンラインライブ『明日を信じて』を新宿アルタにあるKeyStudioで開催した。

樋口なづな

今回のライブは、スパガのシングル曲として自身が初めてセンターを務める新曲「明日を信じてみたいって思えるよ」のリリースを記念したもの。なづちは、2度目となるソロライブ開催をかけて、本楽曲の情報解禁が行なわれた6月12日の10周年特番から7月27日(なづなの日)までの毎日、SHOWROOMの個人配信を通して100曲を歌い切るという企画に挑戦。見事44日目に100曲を披露し、今回のステージが実現した。

新宿アルタ

 

会場となったKeyStudioは、かつて、あの“お昼休みはウキウキウォッチングな”国民的番組が生放送されていたスタジオの跡地を利用したライブハウス。業務用のムービーカメラといった配信機材だけでなく、単なるライブハウスには不要ともいえるテレビ用照明も備えるなど、withコロナ、afterコロナ時代にも完全対応した会場だ。その一方で、ステージの対面には副調整室(テレビスタジオに隣接して、スタジオの映像や照明、音声などを操作・調整する番組のコントロールルーム)として使われていたスペースがそのまま残るなど、日本のエンターテイメントにおいて数々のスターとの名場面を生んだ“伝説の場所”でもある。

 

18時。リハーサル

メイク直しを終えてフロアへ続く扉を開けたなづちは、ステージを見て「広っ。」と一言。初めてワンマンライブを行なった時よりもはるかに大きいフロアとステージに戸惑いを隠せない。しかしこの日は彼女こそが主役。マイクを受け取ってステージに立つと、気になるところを中心に、さっそく入念なリハーサルがスタートしていく。

 

ゲストの金澤有希と井上真由子を呼び込んでのパフォーマンスのリハーサルでは、マイクスタンドがステージ上に用意される。ゼロではないにせよ、スパガではさほど使用する機会がないマイクスタンド。会場でその感覚を確認してみると、リハーサルスタジオでのそれとは勝手が違うのか、3人ともいささか歌い辛そうな表情を浮かべる。とはいえ、スタジオの音響スタッフとともにいい響きを作り上げようと何度か歌い、調整を図ることで最終的には問題は解決された模様だ。

 

樋口なづな

これに気分をよくしたのか、もしくは「このPAさんなら上手くやってくれるかも?」と思ったのか、リハーサルの最後に、なづちからもうひとつ注文が飛び出す。本番中のMCで金澤有希によって語られた「(私の)吐息がちゃんと聞こえるように……。」というのがそれ。本人は思いがけずバラされてしまったことで顔を隠して照れていたが、自分のライブパフォーマンスを視聴者にどう届けたいかというこだわりには、“ボーカリスト・樋口なづな”としての片鱗を見た気がした。

 

20時。開演

樋口なづな

ついにその時が訪れる。夏っぽいワンピースと三つ編みに麦わら帽子を合わせたなづちは、ステージ中央で静かに音を待つ。バックに浮かび上がるのは、本人直筆のタイトル「明日を信じて」の文字。そして暗闇の中で彼女が歌い始めたのは、ROCK’A’TRENCH「My SunShine」だった。

 

「会いたくて 会いたくて / 星の数の夜を越えて」 ── ROCK’A’TRENCH「My SunShine」より

 

本人曰く、冒頭のフレーズに“ニジスト(スパガファンの総称)に会う機会が作れない今の状況”が重なっての選曲とのことだが、2011年に無期限活動休止となったROCK’A’TRENCHが同曲を発表したのは2009年。なづちはなぜROCK’A’TRENCHを知っているのか。8歳の時にリリースされた曲がなぜ記憶に残っていたのか。いささか不思議に思ったりもしたが、この曲が水嶋ヒロと榮倉奈々が主演したフジテレビ系ドラマ『メイちゃんの執事』(原作は集英社『マーガレット』で連載された漫画)の主題歌だったという事実が、この疑問の答えを導く糸口になるのかもしれない。

 

光の玉が浮かぶ背景映像と、より演者を綺麗に映すことができる本スタジオの照明の相乗効果で、普段から白いなづちの肌は一層の透明感を帯びる。一方で、このライブが行なわれているスタジオの場所はもちろん、今回のライブに対してテレビクオリティーにも匹敵しうる機材が揃えられたことすら知る由もない視聴者からは、ライブの幕が開けた喜びで思わず笑顔が溢れるなづちの映像を目にして、素直に「音楽番組みたい!」というコメントがいくつも投げ込まれていた。

 

さらに夢みるアドレセンス「メロンソーダ」や、今回の彼女のビジュアルを決める際のヒントにもなったという渡辺麻友の「三つ編みの君へ」などを立て続けに披露。伸びやかな歌声を画面の向こう側にいるファンひとりひとりに届ける。

 

MCでは、今回のライブに際して自ら声をかけた、金澤有希と井上真由子のふたりを呼び込む。ステージに出てきたふたりは「もうね、“なづ様”って感じ。」「表情が本当にかわいい。」と、なづちを絶賛。ところでこのふたりが出てくるMCパートに台本などあるはずもなく、トークと進行はすべてアドリブだ。

 

吐息をマイクに乗せて

なづち

大塚愛「黒毛和牛上塩タン焼680円」やモーニング娘。「愛して 愛して 後一分」といった楽曲を並べたブロックは、本人がブログでも記載していたとおり普段のスパガの曲にはないような色っぽさや艶気を感じさせる。リハーサルの時に「吐息を聴かせたい」とPAスタッフにリクエストした楽曲群が並んだブロックだ。その要望の通りに「黒毛和牛上塩タン焼680円」の最後のフレースなど、樋口なづなの“女を感じさせる”吐息がマイクにもしっかり拾われ、視聴者の耳元をくすぐる。

 

マイクといえば、ボーカリストにとってマイクとは、ステージをともにする戦友であり、一番近いところにいる仲間であり、そして魂(ソウル)である。

 

なづちのマイクの持ち方は、ハロプロではおなじみの小指をマイクに添わせるタイプ。この握り方は一部では“ごっちん持ち”とも言われ、その名前の通り後藤真希を始祖とする(いや、もっと厳密に言うと、“ごっちん持ち”はマイクの下に小指をくぐらせるつんく♂の持ち方の派生と見ることもできるのだが)。そして、田中れいななど後藤に憧れる後輩たちによる後藤直系の握り方と、“ごっちん持ち”の機能性や合理性は維持しながらも、たとえば、より美しさを追求し、とりわけ整ったネイルとマイク越しに見える口元、そして光の粒が弾けるような眼差しによって描かれる黄金比を形作る“美しさの絶対基準”夏焼 雅の持ち方や、“ファンの皆さんの愛を受信するアンテナ”をコンパクトに立たせたタイプなど、いくつかの派生形も生まれた。読者の中でもきっと当然の知識に違いない。

 

なおリハーサルで「ごっちんと同じマイクの持ち方だね。」と声をかけると、なづちは「どぅー……あ、工藤遥さんとも同じなんです。」と一言。後藤真希に憧れた田中れいなが継承し、そして田中れいなに憧れた工藤遥が継承した魂は、グループや事務所といった人為的な枠組みを越えて、工藤遥に憧れるSUPER☆GiRLSの樋口なづなにもまた継承されているのである。

 

樋口なづな

……と、御託を並べてはみたものの、端的に言うと、なづちはハロヲタである。しかもSHOWROOMの個人配信で、“工藤が見せる涙の違い”についてひたすらに熱弁を振るい、視聴者を遥か彼方に置き去りしていようがお構いなしに自分だけ大きな満足感に浸るくらいの重度のハロヲタ。もっとも、そうでない限り「愛して 愛して 後一分」なんていう、俗に言う“プラチナ期”真っ只中の、シングルでいう「気まぐれプリンセス」のカップリング曲なんていうマニアックな選曲はしないのだ。

 

ポテンシャルは計り知れない

スパガ・樋口なづな

back number「わたがし」から始まり、SUPER☆GiRLS「空色のキセキ」に、自身が初めてセンターを務めるシングル曲「明日を信じてみたいって思えるよ」をソロで披露するラストブロック。ここでは彼女がとりわけ想いを込めた選曲であり、背景もその歌声とリンクするような映像演出がなされていた。

 

映像を含めた演出でいうと、投影された映像などは基本的に会場側スタッフのセンスによるもの。ライブを視聴していた人たちならわかるように、オープニングからエンディングまで彼女の曲調や歌詞、イメージしたライブの世界観を見事に表現した演出となっていたのは、会場側スタッフが、樋口なづなのソロライブを成功に導くためにはどのピースをどう当てはめるか、どういう演出なら彼女を最も輝かせることができるかを真剣に考えて、こだわり抜いてくれた結果なのである。

 

ライトの青い光に包まれながら未来への希望を託した「空色のキセキ」を歌い終えると、なづちはゆっくりと目を閉じて、微笑みを浮かべ、ひとつ大きく息を吐く。そして本編ラストソングは、8月5日リリースの新曲「明日を信じてみたいって思えるよ」。青空に流れる雲の映像を背に、なづちは瞳を輝かせながら歌に込められたメッセージを力強く歌い上げる。

 

樋口なづな

 

グループの曲は“歌割り”というものがあるように、そもそもソロで歌うようには作られていない。カラオケでグループの曲を歌おうとすると想像以上に歌いづらかったなんていう経験がある人もいるはずだ。センターとはいえ、“歌いこむ”というまでには場数的に全然足りていない、リリースもこれからの新曲を、ソロで、しかもライブで歌いこなしてしまう樋口なづなのポテンシャル。これは計り知れないものがある。

 

アンコール

コメントで大量に寄せられるアンコールの文字列。これに応えるように、ステージには3本のマイクスタンドがセッティングされ、再びステージに姿を見せる。アンコールに用意されていた1曲は、なづちにMCで登場した金澤有希と井上真由子を加えての「チュッ!夏パ〜ティ」(三人祭)。3人がキュートな魅力を振りまいて、最後まで視聴者を楽しませた。ちなみにソロオンラインライブの本番中、金澤と井上はモニターがある前室でライブの様子を視聴していたのだが、なづちのライブパフォーマンスの素晴らしさに本気の焦りを覚えたのか、後半になるにしたがって自分のスマホで「チュッ!夏パ〜ティ」の音源を流しながら何度も何度も振りの確認をしていたのは、ふたりの名誉のためにも私の胸の内だけにしまっておきたい。

 

スパガ樋口なづな、金澤有希、井上真由子

エンディングでは、やっとプレッシャーから解放されたのか、なづちのトークも饒舌に。「はたしてこのトークはいつ終わるのだろう……?」と、配信スタッフの心配もよそに、次から次に話したいことが浮かぶのか、彼女のトークはしばらく止まる気配を見せない。ところが、“ライブが終わってステージを去るのが名残惜しい”ことを表現したかったものの、なぜか「負け惜しみ」というフレーズがふいに彼女の口をついて出てしまう。そんな言い間違いをしてしまったことがトリガーとなり、終了予定時間をそこそこにオーバーして、樋口なづなソロオンラインライブ『明日を信じて』は、無事に幕を下ろした。

 

配信が終了したのち、Twitterを始めとするSNSには、ハッシュタグ「 #なづなの日ソロライブ 」とともに、今回のソロオンラインライブを視聴したファンからの多幸感に溢れた書き込みとライブ中の画面キャプチャーが数多く投稿されていたのだった。

 

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キースタジオと樋口なづな

なづち

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