鞘師里保はあるべき姿で、あるべき場所に。『1st LIVE 2021 DAYBREAK』

おかえり。

令和3年8月4日(=さやしの日)に 1st EP「DAYBREAK」にてCDデビューした鞘師里保が、8月9日に豊洲PITにて1stライブ『RIHO SAYASHI 1st LIVE 2021 DAYBREAK』を開催した。

 

約5年半ぶりとなる、歌って踊る鞘師里保の帰還。まもなく我々の前に鞘師が登場する。そんな気持ちが会場へ我先にと急がせる。開演前の豊洲PITには長蛇の入場列ができ、フロアは赤のライブTシャツを着たファンが埋めていく。ご存知のとおり、新型コロナウイルス感染症の感染防止対策の一環で、会場のキャパシティーは1/2に制限。とはいえ、1500人のオーディエンス(と、BSスカパー!での生中継を視聴していた多くの人たちは)、固唾を飲んでその瞬間を待っていた。

 

開演時間を10分ほど過ぎて、いよいよ暗転。照明が光のカーテンを作り、次の瞬間、三方から照射されるスポットライトを浴びて、荘厳なステージの中央にその人の姿があった。

 

1曲目となった「BUTAI」は、今回のEPを制作する過程において、一番最初にできた曲だ。ステージへと向かう情景から始まるこの曲は、まさに鞘師が見て感じてきた世界。ちなみに本作で彼女はすべての楽曲の作詞を担当しており、“用意された服を着こなす”だけの存在から表現者として一歩足を踏み込んだ鞘師里保へと進化している。

 

「Fine Me Out」「Simply Me」と、名うてのミュージシャン陣で固められた生バンドの音をバックに、ふたりのダンサーを引き連れて、鞘師は歌い、そして躍動する。それは集まったオーディエンス誰もが長きにわたって求め続けていた彼女の姿。眼前に広がった豊洲PITのステージで展開されるまばゆいばかりの光景に、我々は一瞬たりとも視線を外せない。もはやそこに「鞘師里保が歌い踊っているという事実が、ただただ嬉しい。」という感情以上の何かを求めることも、表現することも必要なかった。

 

一方で、「ただいま。」という一言から始まり、いろいろ話したい、たくさん伝えたいという気持ちがダダ漏れ状態になっていたMCパート。そうかと思えば、なんだか嬉しそうにステージをぐるぐる駆け回ったり、ステージを移動しながらすべての観客に手を振ろうとしていた姿からは、昔と変わらないような、むしろ昔よりも自然体な鞘師里保を目にすることができた。

 

この日のライブでは、1st EP「DAYBREAK」に収録された5曲と、以前、オンラインライブで披露された「あの⽇約束したから」の全6曲をパフォーマンス。ラストで同EPのリード曲でもある「LAZER」を披露した際には、綴った歌詞と気持ちが重なり、思わず感極まって歌えなくなる一幕も。オーディエンスはそんな鞘師も含めて、いつまでも鳴り止むことのない拍手で鞘師里保を称賛し続けていた。

 

なお、本公演は8月23日よりスカパー!オンデマンドで配信されるほか、8月29日22時からは、ライブ本編に加えてリハーサルの模様やライブ後のインタビューを加えた完全版としてスペースシャワーTVプラスにてオンエアされることが決定。さらにこの日、鞘師里保のツアー『RIHO SAYASHI TOUR 2022』の開催決定もアナウンスされている。

 

数日前、「私たちはついに歌って踊る鞘師里保を取り戻しました。」というフレーズがSNS上を踊っていた。「それは誰から取り戻したのか。」と、外野からは見当違いな推測がいくつも付け加えられて、それはそれは現代のダイバーシティを見事なまでに体現していた(まあその多くは、いつまでも過去に囚われている残念な人たちからの声だったわけだが)。

 

では一体、私たちは誰から鞘師里保を取り戻したのか? この日のライブを目撃した人ならすでに気づいていることだろう。

 

「ちょっとタイミングを間違えていたら(歌うことを)辞めそうでした」という告白と、思いとどまらせてくれたのはファンからの声だったという鞘師。一度は運命という名の幻想に流されそうになりながらも、彼女は気づいたのだろう。自分が本当に求める運命とは流されてたどり着くものではなく、抗い、切り開き、作ることができるということに。

 

そして今、彼女はあるべき姿で、あるべき場所に。大観衆が待つステージの、スポットライトが照らすその中心へ。

 

そう。“私たち”は、ともすれば歌もダンスも捨ててしまいかねなかった“過去の彼女自身”から、ついに鞘師里保を取り戻したのである。

 

おかえり。

 

鞘師里保スタッフTwitter
鞘師里保オフィシャルサイト
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